第6話

百々の個性.°
51,150
2020/05/19 06:15
緑谷𝓈𝒾𝒹𝑒.°


“筋力増幅”


“全回復”




個性が……2つ……!?



飯田「何を言っているんだ彼女は……」



隣で、飯田くんが頭を抱えた。


僕も彼女の言動には驚かされたし、信じられない。


……個性が2つなんて、そんなこと。



麗日「“筋力増幅”って……デクくんの超パワーとちょっと似てるね……」



かっちゃんに睨まれてこっちまで戻ってきた麗日さんに言われて、確かにともう一度百々さんを見た。



爆豪「おいほくろ野郎てめぇ!んな嘘が通じると思ってんのか舐めてんのかおい!!」



かっちゃんの気に障ったようだ。


胸ぐらを掴んで押し上げるかっちゃんの手首を、抵抗すべく握る。



あなた「ほんと……なんだけど!」



歪めたはずの顔は、それでもなお整っていて演技にさえ思えてくる。



爆豪「そんなら今ここで!!使ってみろよ、その個性……!」



『足元にも及ばない』


そう相澤先生から言われたことが、よほど屈辱だったんだろう。


昨日あんなことがあったばかりだし……。



あなた「っ……」



さらに力を入れるかっちゃんの手から、百々さんのそれが離れた。


スッと右手で自身の左手首を掴み、かっちゃんに見せるように前に出した。



爆豪「なにを……」



バギッ、ゴキッッ……!!




緑谷「!!!?」



あなた「ぐ……ぁっ、」



ドサッ




飯田「じ……」



轟「自分の腕折りやがった……」



麗日「ひぃぃっ、」



あまりの生々しい音に、かっちゃんはすぐに百々さんを解放した。


百々さんはそのまま尻餅をつき、見るからにポッキリ折れている腕を右手で押し上げた。




あなた「フー……フー…………見て、よ……」



爆豪「っ、あ"ぁ……?」



あなた「“筋力増幅”……」



緑谷「!!」



確かに、首を掴まれて普通にあのパワーを出せるとも思えない。


それにあんなに綺麗に折れるってことは……。




あなた「それから……」



爆豪「……っ」




百々さんは自身の折れた腕に、そっと触れる。


途端、眩い光に包まれて。



ゴッッ……キン



数秒して光が消えた後、綺麗に元通りになった左手が現れた。





あなた「“全回復”……。っあ~!やべぇめっちゃ痛かったんだけど……」




「もう絶対やらないわぁ……」とぶつぶつ言いながら、腕をさすって立ち上がった。




飯田「なんて……ことだ」



飯田くんに同調する言葉も、何も見つからない。



あなた「これでも私とやりたいって言うなら……別にいいけどさ」



爆豪「……」



あなた「どうする?やる……?」





左腕の動きを確かめるように手首を回しながら、挑発するようにかっちゃんに尋ねた。


少し、ほんの少しだけ……怒っているようにも見える。




爆豪「______あたりま」

轟「待て」




かっちゃんを遮って、轟くんは相変わらずの無機質な声を発した。





轟「さっきも言ったろ……俺が先約だ」



爆豪「知らねぇよ、んなことぁ……!こいつはやるっつってんだろ!!」



今にも個性を使いそうな勢いのかっちゃんを放っておいて、轟くんは百々さんに視線をやった。




轟「俺の話は……“一つ目ヴィランについて”だ。それでもお前は……爆豪を優先するのか?」



……“一つ目ヴィラン”??


なんだ、それ……聞いたことないぞ。



誰もが轟くんの発言に疑問を抱いている中、ただ1人……。









百々さんだけが、表情を強張らせて震えていた_。

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