エンデヴァー𝓈𝒾𝒹𝑒.°
体育祭で焦凍と当たり、途中退場した百々あなた。
正直その無責任さには呆れたが、確かな技量と知恵、それから戦いのセンスが光っていた。
指名は焦凍だけと決めていたが……。
体育祭を終えた会場に1人訪れ、悔しそうに唇を噛み締めていたその姿に______。
"これだ"と思わされた。
焦凍は、百々あなたの存在で強くなれると確信した。
事務所の者から聞いた話では、休日に茶を飲むほどの仲。
焦凍の牽制に百々あなたの超パワー……守りと攻撃、回復を兼ね備えた最強コンビが誕生する。
流石だ焦凍……いい子に目を付けた。
オールマイト𝓈𝒾𝒹𝑒.°
塚内くんからUSJ襲撃の時の脳無について話を聞き、"あの男"の復活を疑わざるを得なかった。
オールマイト「塚内くん……言ったね。「DNAを取り入れたって馴染み浸透する特性でもない限り、個性の複数持ちなんてことになりはしない」と____」
塚内「?……ああ」
オールマイト「あの日……USJ襲撃時に、一時昏睡状態に陥った少女が居ただろう」
塚内「ああ……メディアには公表しなかったが、確かに居た。確か名前は______」
オールマイト「百々あなた」
考えたくもなかった。
『オールマイトっ!』
あんな年端もいかない少女が……"あの男"と繋がっているかもしれない。
あの子の両親の話は聞けていないが、その個性によって判断が変わってくる。
オールマイト「彼女は正真正銘……個性の複数持ちなんだ」
塚内「……!まさか、君……」
オールマイト「勿論、生徒を疑いたくはないさ。だからこそ今回のドラフト指名であの子を指したんだが……来てはくれなかった」
塚内「No. 1ヒーローからの指名を断るとは、中々____」
オールマイト「それこそが……。あの子が我々に隠している秘密に繋がっているのではないかという思考に陥らせてしまうんだ。もし、もし本当に"あの男"と繋がっていたとすれば_______」
そこまで話すと、塚内くんに止められた。
塚内「君は今、雄英の教師だ。生徒を疑うのは心が痛いだろう……彼女については、こちらで調べてみるから」
オールマイト「…………あぁ」
頼むから……杞憂であってくれ。
ステイン𝓈𝒾𝒹𝑒.°
ヴィラン連合、という組織のトップと思われる死柄木という男と話し、その信念の無さに呆れざるを得なかった。
ステイン「だからこうなる」
死柄木の両肩に刀を刺し、動きを封じた。
黒霧という奴も、個性で止めてある。
ステイン「ヒーローが本来の意味を失い、偽物が蔓延るこの社会も、悪戯に力を振りまく犯罪者も____粛正対象だ」
顔に刀を近づけると、死柄木の手が俺の刀を掴んだ。
死柄木「ちょっと待て待て……この掌はダメだ」
さっきまでとはまるで違う、覆い隠されている顔からも見て取れるほどの憎悪。
死柄木「_______殺すぞ」
ステイン「……!」
ピシッ、ピシッ、 と、刀にヒビが入っていく。
コイツの個性か……?
死柄木「口数が多いなぁ……。信念?んな仰々しいもん無いねぇ」
サラサラッ、
チリとなって刀が消え、死柄木は不気味に笑った。
死柄木「強いて言えば……そう、オールマイトだなぁ。あんなゴミが祭り上げられているこの社会を、滅茶苦茶にぶっ潰したいなぁとは思ってるよ……」
一瞬気圧され、次の瞬間襲いかかってきた手を避けて臨戦態勢をとる。
コイツ……。
死柄木「折角前の傷が癒えてきたところだったのにさぁ……。百々あなたも見つからないし……こちとら回復キャラ居ないんだよ。責任とってくれんのかぁ……?」
ガリガリと首を掻き、その顔面についた手の指の間から確かに睨みつけてくる。
百々あなた……?
この間の、あのガキか。
ステイン「それがお前か」
死柄木「はぁ?」
ステイン「お前と俺の目的は対極にあるようだ。だが、"今を壊す"。この一点において俺たちは共通している」
死柄木「ざけんな帰れ死ね。最も嫌悪する人種なんだろ……?」
ステイン「真意を試した。死線を前にして、人は本質を表す」
……そう。
俺を前にした"あのガキ"のように______。
死柄木「こんないかれた奴がパーティメンバーなんて嫌だね俺は」
黒霧「死柄木弔。彼が加われば、大きな戦力になる。交渉は成立した_____」
ステイン「要件は済んだ。さぁ、俺を保須へ戻せ。あそこにはまだ成すべき事が残っている……」
加わってやる。
だが、"あのガキ"をそこに加えるのは俺の信念に反する。
どちらにせよ、まずは保須に向かおう。
正さねばならない事が、残っている_______。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。