第124話

最高のプレゼント.°
18,769
2021/01/11 12:38
緑谷𝓈𝒾𝒹𝑒.°



あなた「いや〜ほんと……最高の誕生日だった!」


芦戸「何言ってんの!まだまだ終わらないからね!?」




花火が終わって、後片付けをしてから中庭にクラス皆が再集結。


あなたは"大満足"と言いたげな顔で芝生に寝転がって、その顔を覗き込むように芦戸さんが仁王立ちした。




あなた「え……?まだ何かあるの??」




首を傾げながら、スッと伸ばされた耳郎さんの手に掴まってその場に立つ。




芦戸「ふっふっふ……忘れちゃダメだよ!誕生日と言ったら"誕プレ"_______つまり誕生日プレゼントだあぁぁぁぁっ!」




両手を天に突き上げて、流れるようなステップであなたの前まで移動するとその手を引っ張っていく。


まずは葉隠さん。





葉隠「あのねっ、あなたちゃんスマホ持つようになったし、せっかくだから……!」




両手を後ろに回して隠していた小包をあなたに手渡す。


「開けてみて」という言葉に、言われるまま袋を開けるあなた。




あなた「!……スマホケースだっ。可愛い、ラメ入ってる!」





取り出したスマホケースは、振ると中に入れ込まれているラメがキラキラと光るとても可愛らしいものだった。


確かに、あなたは生のままスマホ使ってたし……落としたら危ないもんな。



葉隠さんよく見てる……!




次に、麗日さん。






麗日「あなたちゃん、前指先乾燥するって言っとったから……」


あなた「うわぁ、ハンドクリームだっ!しかもいい匂いするやつ!!やったぁ!」





1人1人からの心のこもったプレゼント。


あなたはそれに対して、本当に……心底嬉しそうに飛び跳ねて、その天真爛漫な笑顔を僕たちに向けた。




太陽のようで、それでいて儚い一輪の花のようで。



多分、あなたが周りから愛される理由はこれなんだろうなって、ちょっと思う。






芦戸「とりあえず、女子からはこれだけかな!」





芦戸さんや麗日さんは個人個人で、八百万さんや蛙吸さんは2人で1つ_____といった具合で、あなたへのプレゼントを渡した。





芦戸「男子は〜?そういえば用意するように言ってなかったけど……何かある?」


切島「すまん……用意しようと思ったけど金欠でよぉ……」




申し訳なさそうに頭を下げた切島くんに、やっぱり笑顔で返すあなた。





あなた「ううんっ。こんなにいっぱい楽しかったし、充分過ぎるよ!またサンドバック使わせてね?」


切島「おう!当たり前だ!」





まただ。


あなたは、相手に申し訳ないと思わせないのがとても上手い。



心を広くして許す、というより、何かを求めて来てくれるからだろうか。





峰田くんがよく分からない服を渡して、「中は見なくていい。部屋でじっくり見てよィヒヒッ」という不敵な笑顔に女子一同が引いている。



僕はその間に、こっそり用意していたプレゼントを石階段に置いておいた鞄から取り出した。





緑谷「えっと、次……僕いいかな?」


あなた「いずくんっ??え、もしかして________、」





ものすごいキラキラとした目を(何故か芦戸さん達にまで)向けられて、たじろいでしまう。






緑谷「皆みたいにお洒落とか、気の利いたプレゼントは難しくて……この間、勉強してた時に言ってたから……」


あなた「なになにっ、開けてもいい!?」





興味津々に尋ねられて、頷くと鼻歌混じりに袋を開ける。


中から出てきたのは当たり前だけど、僕が選んだシャーペンだった。





緑谷「ごめん、化粧品とかそういうの、分からなかったから……。あ、でもそのシャーペン凄いんだ!構造が文字を書いてても手に疲れを残さないようになってて_________」


あなた「ふぉぉぉ、かっこいい!メタリック!!」


緑谷「へ、?」





そこ……?


あなたはそのシャーペンを両手で持って飛び跳ねて、それから僕にずいっと近寄った。






あなた「ありがとーいずくんっ!大切にする!!」


緑谷「っ、///……う、うん」






その無邪気な笑顔も、笑うと同時に動く目元のほくろも……。



全部、愛しくて……。







あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°




あ〜……。



やばいなぁ。





芦戸「緑谷ぁ、やるじゃん!見直した!」


上鳴「どーかな、俺なら香水とかもっとオシャンティーな________」


耳郎「用意もしてないアンタが言うな」


上鳴「ちがっ……!!間に合わなかったんだよ!あなた、届いたらすぐ渡すからな!?香水じゃないけど!」


瀬呂「違うのかよ……」


あなた「うん…………う、ん……


「「「!!!?」」」





あれ……。


視界が歪む。




鼻がツンとして、目元が熱い。




あぁ、そうだ……私。





芦戸「っ、あなた……!?ど、どうs_____」


あなた「ちがっ……あは、嬉し……くて、」






私に……樹ほどに大切な何かができるなんて思ってもみなかった。


皆は毎日、私に新しい感動といつも通りの日常をプレゼントしてくれる。



それがどうしようもなく嬉しくて、幸せで……。





芦戸「あ〜ぁ……、あなた、最近泣いてばっかだなぁ」


あなた「あはっ……うん、皆のせい!!」


耳郎「言い方言い方」


芦戸「そういえば爆豪は?何か用意してな________あれ、爆豪は??」





……?



三奈ちゃんが辺りをキョロキョロ見渡すので、皆も同じような仕草をとった。


爆豪くんはもういなくて。



いつの間に部屋に戻っちゃったんだろう……。




芦戸「おっかしいなぁ……私の予想では爆豪も誕プレ用意してると思ったんだけど______って、轟まで居ない!!」




「ありえない!」と叫ぶ三奈ちゃん。


そういえば、花火が終わったくらいから轟くんの姿も見えない。




疲れちゃったのかな、付き合わせちゃったし……明日お礼を言っておこう。




そろそろ中に入ろうか、と誰からともなく提案されて、寮内に向かって皆で進み始めたその時。





緑谷「あれ、轟くん??」


あなた「、」





寮の中から出てきた轟くんが、真っ直ぐ歩いて私の方へ。


その他には、1つの大きな紙袋がぶら下がっていて。





轟「わりぃ。部屋戻ってた」


あなた「……??」






なんで謝るのかと首を傾げると、その紙袋をスッと前に出してきた。



……もしかして、プレゼント??





あなた「え……くれるの?」


轟「そのために買った。前喜んでたし、」





「前」……??


不思議に思いながら受け取ると、三奈ちゃんたちから「中は!?」と質問攻め。



囲まれながら轟くんを見ると、コクりと頷いた。





ガサガサと中身を取り出す。






あなた「_____________服、」






それも、1つじゃない。



中にはいくつか袋があって、その一つ一つに服が入っているようだった。


試しに開けてみた1つは、一度買い物に付き合ってもらったせいか私の好みどんぴしゃで。



多分、このどれもがそうなんだろう。



轟くんが、私のために買ってくれた服……。



前は、選んでもらっただけだったけど。





轟「……気に入らねぇか」


あなた「えっ、」





あまりの驚きに黙り込んだ私。


轟くんのその呟きに、慌てて首を振った。





あなた「違うのっ、嬉しくてビックリして……でも、いいの!?こんなに……」


轟「1つにしようと思ったんだが、お前に似合うと思って。……いつの間にか増えてた」





「いつの間にか」って……。






轟「それ着て、またどっか行こうぜ」






なんでもないように言ったその台詞に、私は勿論三奈ちゃん達まで赤面。



終いには「リア充めぇぇぇぇぇぇ!!」と泣き叫びながら峰田くんが走り去って行って、その言葉の意味に首を傾げていると「気にしないでいいよ」と苦笑いの三奈ちゃん。




轟くんに再度お礼を言ってから、私たちはようやく寮内に戻った。














あなた「あー……楽しかったなぁ、」





新品のスマホでたくさん写真や動画を撮った。


共有スペースのソファーでそれらを見返しながら独り言をこぼした。




時刻は12時前。


もうすぐ誕生日が終わる。



とっても楽しかった。


多分、明日も明後日もずっと楽しい。






あなた「……幸せ、かぁ」




お母さんやお父さん、樹がいた頃も幸せだったけど……。


このまま、もし……忘れてしまう自分がいたら。




それも、怖い。





あなた「______終わって欲しくないなぁ……




ドサッ、





あなた「_____________っ、!?」





小さく零したその言葉をかき消すかのように、隣に勢いよく座った誰か。



驚いて顔を上げた私と、その人の目がしっかりと合う。





なんで_____________、。






は、その力強い目でしっかりと私を捉えて……キッパリと言った。















































爆豪「まだ終わってねぇだろ。てめぇの誕生日」

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