第68話

信じたい.°
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2020/07/23 15:01
緑谷𝓈𝒾𝒹𝑒.°


ワン・フォー・オールのオリジンを教えてもらい、その根源たる悪の象徴______オール・フォー・ワンがヴィラン連合のブレインとして再び動き出したと伝えられた。



そして_______。




緑谷「力を与える個性______、って、待ってくださいオールマイト!まさかあなたについての話って______」



オールマイト「その"まさか"さ……」




オールマイトが目を伏せて、僕も思わず唾を飲み込んだ。




オールマイト「彼女の個性……"筋力増幅"と"全回復"……あの二重持ちは……奴……オール・フォー・ワンと繋がっていると見て、まず間違いない……」




緑谷「_________、」





あなたが……悪の象徴と_______??




緑谷「そんな……そんな訳、ない、ですよ」



『いずくん!』


『ずっと、自分の個性が憎かった____』


『助けたいって思った』




緑谷「あなたが…………ヴィラン連合の一味かもしれないと、そう、言うんですか……?」



オールマイト「……可能性はなくはない。君も見ただろう。USJの時、あの子は死柄木弔を救った……そして、ヴィラン連合と繋がっていると思われるヒーロー殺しも、同じように、百々少女を救った……」




掌を組んで何度も握り直しながら、重いため息をついた。





オールマイト「……塚内くんに、この話をしたんだ。百々少女について調べてもらった」



緑谷「……」



オールマイト「……戸籍が、無いんだよ」



緑谷「……え、でも、確かにあなたは……家族や、前の学校の話をしてて……皆、死んじゃったって」



オールマイト「……そんな学校、この国の……世界の、どこにも無いんだ」



……あなたが、嘘を、ついてたってこと?



オールマイト「彼女の両親の個性が分かればと思って調べてもらったが、百々あなたという少女の名前はどこにも見当たらず……相澤くんから聞いた、"ユグドラシル"というヒーローの名前も……少なくとも日本には、無かった」




緑谷「…………」




オールマイト「勿論、裏の人間として生まれてあの男に実験台にされ、記憶をすり替えられたとも考えられる。だから一概に、あの子がヴィラン連合の一味だとは言い切れない」




緑谷「……絶対に、違います」





だって僕は、知っている。



この場所で笑い、怒り、苦しみ、泣き、喜んで……。



誰より必死にヒーローを目指して、更に向上していこうとしているあなたの事を。




自分の命を顧みず、轟くんを救ったあなたの事を。



同じように、市民を助けて、そして僕達のところに駆けつけてきてくれたあなたの事を。



天真爛漫に笑う、無邪気で元気で、可愛らしいあなたの事を。



だから________。




緑谷「僕は……僕は、信じています。あなたは絶対、そんな人じゃ無い」








信じたいんだ。




あなたの事を。





友達だから_________。



あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°




あなた「ご馳走さまでした!」


光希「いいえ〜。でもほんとに送っていかなくていいの?」


あなた「はいっ、トレーニングがてら走って帰ります!」


光希「せめて勝己に送らせて_____」


爆豪「んで俺が送らなきゃいけねぇんだよ勝手に帰ってろぉぉ!!」


あなた「はははっ、爆豪くん、連れてきてくれてありがとね?また明日!」




手を振って、爆豪家から出た。



美味しかったなぁ麻婆豆腐……。



小走りで道を駆けながら、だんだんスピードを早めていく。




?「あなた_________?」



あなた「!」





ふと名前を呼ばれて、脇の土手を見るとそこに立っていたのはいずくんだった。




緑谷「なんでここに……」



あなた「爆豪くんのお家に行ってたの!」



緑谷「えぇ!?かっちゃんの!!?…………なん、で」



あなた「ご飯食べてた!いずくん遅いね、今帰り?」





土手に回って話しかけにいくと、「あ……うん」と濁された。





緑谷「えっと……それじゃ、僕こっちだから______」



あなた「何かあった?」



緑谷「え」




緑谷𝓈𝒾𝒹𝑒.°






オールマイトとああやって話した後だから、少し……気まずい。



少しでも、あなたの事を疑ってしまった僕がいたから。





緑谷「ううん……何も無いよ!気をつけて帰ってねっ」




笑うと、「そっか!」と同じようにニコッとして踵を返した。
















緑谷「……信じて、いいんだよね_______?」 

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