第33話

体育祭.°
28,064
2020/07/15 09:42
あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°



ミッドナイト先生が主審を務めると分かった瞬間、会場中の男の人たちが吐息を漏らした。



……やばい、焼きそばもたれてきた。




ミッドナイト「選手代表、1-A爆豪勝己!!」




……え、爆豪くん?



選手代表が誰なのか、聞いてなかったのは昨日復活したばかりの私だけではなく、クラス皆のようだった。



「あいつ一応、入試1位通過だったからなぁ」



あなた「え!?」


蛙吸「あんまりそこで驚かないであげて……」





爆豪くんはポケットに手を突っ込んだまま朝礼代に上がって、マイクの前に立つ。




爆豪「宣誓_________」




あー……気怠そう。



てか、まぁ、だろうなぁ。





爆豪「______俺が1位になる」




あなた「ぶっ」



……期待を裏切らないね。ほんと。



会場、主に他の生徒から批判の声が浴びせられて、爆豪くんはこっちを振り返った。




爆豪「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」



親指を突き下ろしてそう言うと、更に罵声が強くなる。




あなた「ぶっ…………はははははは!!」




やばい……ツボに入った。




飯田「ちょ!百々くんも笑わない!!」




怒っている他の科の生徒や、焦ってるA組の皆と違って笑い転げる私は明らかに異質。




あなた「ふー……ふー……しんどっ、」




お腹を抑えてなんとか息を整えた私を見て、爆豪くんは続けた。





爆豪「約束、守れよな」



あなた「_________!」




昨日のことを思い出して、一瞬で笑いが治った。


いやぁ……ま、私が勝てば良いんだけど。




一回戦は、全クラス合同での障害物競走。




1試合目からあんまり目立っちゃうと後々しんどそうだな……。



よし、適度にいこう。






スタートラインについて、並ぶ。




ミッドナイト「スタート!!!!!!」




「「「うぉぉぉぁ!!!」」」




一目散に、我先へと進み出す皆。


いや、このゲートにこの人数って普通におかしいでしょ。



転びたくないし残ろう。





……あれ?





私だけじゃない?残ってるの……。




案の定詰まっている皆を後ろから見て、なんとか隙間がないかと探る。



……うん、無い。




……通れるとすれば…………。







“上”か“横”……!






足に力を込めて、地面を蹴る。




ダダダダダダダッ




緑谷「百々さん!?」




プレゼントマイク〈おぉっとこの人混みになんと原始的!!……原始的、なのか?……1A百々ぉ!!天井を驚異のスピードで駆け抜け早々と抜けてイクゥぅぅ!!〉




ピキキキッ、




あなた「!」




轟くんの氷が天井に登ってきた。



横の壁と天井の間に足を入れ込んで、押し出す。




ゴォォッ!!





先頭を走る轟くんに追いついて、氷を避けるために前に出た。





轟「百々……!?」



あなた「寒いの苦手だからお先っ!!」 




足の速さには自信あるもんね〜!





爆豪「半分野郎ぅぅぅ!!!ほくろ野郎ぅぅぅ!!!」




ガシッ



あなた「うわっ!?」




飛び上がった私の足を、後ろから二ドロをぶっ放しながら来た爆豪君が掴む。




あなた「離せぇぇぇ!スポーツマンシップが無いの!?」



爆豪「お前にはぜってぇ負けねぇぇぇ!」




もう……!



失速した私を追い抜かして、峰田くんが前に出た。




轟くんめがけて紫ボールを放とうとした瞬間、何かに投げ飛ばされて飛んでいった。





緑谷「峰田くん……!」





「ターゲット……タクサン!」





なにこれ……ロボット?




プレゼントマイク〈さぁぁぁいきなり障害物ダァ!まずは手始め、第一関門っ!!ロボインフェルノぉぉ!〉





切島「入試ん時の0ポイントヴィランじゃねぇか!」





あなた「……へぇ、入試か」






ロボット……。



だから心操くんは、突破出来なかったわけだ。




ふと後ろを見ると、なにやら騎馬戦のような体勢だ進んでくる組が。




……心操くん、自分で走りなよ。





しかし……でっかいなぁ、このヴィラン。




ま、多分1番に抜けるのは轟くんだろう。





小走りに轟くん付近まで行くと、呟きが聞こえてきた。





轟「クソ親父が来てんだから……!!」




……お父さん?




氷は瞬く間にヴィランを覆い、その場に固まる。





「あいつが止めたぞ!」


「足元の隙間だっ、通れる……!!」




私に着いてきていた生徒が我先にと通ろうとするので、仕方なく上に跳ね上がった。




轟「やめとけ、不安定な体勢の時に凍らせた。倒れるぞ……!」




でしょうね……。



凍りきってないところに足をつけ、頭に登った。


そこから轟くんめがけて足に力を入れる。




あなた「落っこちるよ〜っ!!」





一応声をかけてから、グッと押し出した。



私が前に進むのと逆に、凍った仮想ヴィランは生徒の方へ倒れていく。






プレゼントマイク〈1A轟ぃぃ!攻略と妨害を一度にぃぃ!!すげぇなっ、もうなんかずりーな!〉




先生、語彙力どうした。



そんでもって空飛んでる私に気がついてないな。





相澤〈上空にいるやつも紹介してやれ。睨んでるぞ〉




……NICE。




プレゼントマイク〈んぁっ!?い、1A百々ぉぉ!いつの間にか轟の上空へぇぇ!!〉






実況に気がついて、轟くんが私を見上げた。





氷を用意しているのが分かって、数メートル後ろに着地して歩調を合わせる。







怖、完全に獲物を狙う目だったよ。



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