記者〈拐われた爆豪くん、百々さんについても同じことが言えますか〉
私……拐われたって事に、なってるんだ。
荼毘にお腹に手を回され、拘束されたままテレビの音を聞いた。
先生たちが会見を受けていて、記者は攻撃的に質問を繰り返している。
爆豪くんの優秀さ、経歴、そしてそれと同時に体育祭での粗暴な一面や表彰式に至るまでの態度に付け込まれたのではないかと言うのだ。
記者〈百々さんについても同じ事が言えます。彼女は雄英には珍しい転校生、そして体育祭では結果こそ残したものの試合を放棄して途中退場と……こちらも荒々しい面が見られますね〉
……確かに、まぁ。
我ながらそうだと思う。
記者〈言葉巧みに彼女らを拐かし、悪の道に染まってしまったら。未来があると言い切れる根拠をお聞かせください〉
……そんなの、答えれるわけないじゃん。
爆豪くんは別として、雄英教師が私の事信用してるなんて思えない。
今ここで取り繕ったって、結局は……。
相澤〈_________爆豪勝己、及び百々あなたの粗暴な行動については、教育者である私の不徳の致すところです。ただ、爆豪の体育祭での一連の行動は、彼の理想の強さに起因しています〉
淡々と、相澤先生の声が聞こえてくる。
……私の事、なんて言うかな。
怒ってるかな、呆れてるかな、もう……怒ってすら、くれないかな。
相澤〈百々に関しては、担任である私も彼女の実力には一目置いています。体育祭での試合放棄も、彼女は1ヒーローとして救いたいが為に行動したのです。2人とも、理想のヒーローを追い求めもがいている……彼らのあの行動を見て隙と捉えたのなら、ヴィランは浅はかであると、私は考えております〉
あなた「……………」
相澤先生……。
爆豪「はっ、言ってくれるな……雄英も先生も!_______そういうこった!クソカス連合!!さっさとそいつ離してこっち返しやがれ!!」
荼毘「……」
荼毘の手に、力がこもる。
爆豪くん……。
爆豪「言っとくが俺はまだ、戦闘許可解けてねぇぞ!!」
マグネ「自分の立場よく分かってるわね……小賢しい子!」
荼毘「いや……馬鹿だろ。こいつはもうお前らんとこには帰らねぇ」
爆豪「本人に聞いてみんと分かんねぇだろうが何決めつけてんだ!?」
あなた「っ…………」
_________帰りたい。
まだ、間に合うなら……皆の所に。
でも……私は荼毘に掴まれたまま、爆豪くん1人で戦わせる訳には……。
爆豪「俺との約束守るんなら、てめぇのするべき事は1つだろ!!てめぇはどうしてぇんだ!?あ"ぁ!!?」
あなた「_______……、」
私は……。
死柄木「お父さん……」
あなた「、!?」
爆豪くんの爆破を喰らって顔についていた手が取れてから、死柄木の様子がおかしい。
黒霧「いけません死柄木弔っ落ち着いて!!」
あなた「っ、」
一瞬、物凄い禍々しいオーラが室内を覆って。
爆豪くんの危機を感じて咄嗟に荼毘から離れると、死柄木は黒霧と私を手で制した。
死柄木「手を出すなよ……お前ら。それから……あなたは自分の立場をもう少し考えろ」
あなた「〜っ、」
『お前の判断ひとつで守れるんだ』
ここに来る前に言われた言葉が頭をよぎり、出した足を引いた。
爆豪くん……お願いだから、大人しくして……。
死柄木「できれば少し耳を傾けて欲しかったな……君とは分かり合えると思ってた」
爆豪「分かり合うだ……?ねぇわ!」
死柄木「……仕方ない。ヒーローたちも俺らの調査を進めていると言っていた。悠長に説得してられない……。先生、力を貸せ」
グイッ
荼毘に再度引き寄せられて、爆豪くんから1番遠くに離された。
死柄木「黒霧、コンプレス……また眠らせてしまっておけ」
コンプレス「はぁ……ここまで人の話を聞かねぇとは。逆に感心するぜ」
爆豪「聞いて欲しけりゃ土下座して死ねぇ!」
コンプレスがゆっくりと、爆豪くんに近づいて行く。
やばい……このままだと。
私が……ここに来たのはなんで?
あなた……思い出して、絶対……助けるって決めたでしょ……?
約束……果たす、ためには_________。
爆豪「(最大火力でぶっ飛ばしてぇが、ワープ野郎が邪魔過ぎる……!考えろ……どうにか隙作って、あなた引き剥がして後ろのドアから______)」
助けたい。
爆豪くんには、ヒーローに_____……!
あなた「爆豪くっ_______逃げて!!!!」
荼毘「っ!?おい!」
荼毘から離れて、コンプレスと爆豪くんの間に走る。
爆豪「!?」
ここ一帯殴り飛ばして回復使いつつ脱出_____
コンコンコンッ
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。