あなた「おっはよ!いずくん!!」
目が覚めてから初めての通常授業だ。
教室で三奈ちゃんと話していると、飯田くんといずくんが飛び込んできた。
……飯田くん。
見た感じ大丈夫そうだけど、平気だろうか。
平気な訳、ないよね。
でもきっと、皆に傷ついているところをわざわざ見せるタイプではないから。
皆、登校中に声をかけられた話で盛り上がっている。
体育祭はテレビ中継され、特に三回戦まで勝ち残った私たちは名前まで覚えてもらっていたから。
ガララッ
相澤先生が入ってきて、皆即席についた。
相澤「今日のヒーロー情報学、ちょっと特別だぞ」
特別……。
ヒーロー情報学は、私にとって1番苦手な科目にあたる。
知らないもん……法律とか。
相澤「コードネーム。……ヒーロー名の考案だ」
「「「「胸膨らむやつきたぁぁぁっ!!」」」」
飛び上がって喜ぶ皆を眼力で静かにさせてから、相澤先生は続ける。
相澤「先日話した、プロヒーローからのドラフト指名に関係してくる。指名が本格化するのは、経験を積み、即戦力として判断される2、3年から。今回1年のお前らにきた指名は、将来性に対する興味に近い」
"将来性"……か。
私には、あんまり関係ないな……。
グレーの空を見上げながら、相澤先生の声を耳に入れる。
相澤「で、その集計結果がこうだ」
わぁ、と感嘆の声が漏れた。
チラッと黒板を見ると、まず1番上に表示されている棒グラフは轟くんのもの。
そしてその下に_________。
あなた「………………え、私??」
相澤「例年はもっとバラけるんだが、3人に注目が偏った」
耳郎「爆豪が轟の下なのは分かるけど……」
爆豪「あ"ぁ!?」
瀬呂「表彰台で拘束された奴なんかビビって呼ばないって……」
爆豪「ビビってんじゃねぇよプロがぁっ!!」
峰田「でも、なんで百々が2位なんだ?試合途中止めした奴とか指名普通減るんじゃ_____」
緑谷「ちょ、峰田くん……!」
あなた「いいよいいよっ。事実だもん」
緑谷「あなた……」
そうだ。
私は轟くんとの試合を放棄して、その理由もあやふやなまま。
こんな結果の私に、これだけ多くの指名がくるなんて。
相澤「まぁぶっちゃけ……百々が転校生っていうのもあるな」
上鳴「??」
蛙吸「雄英に転入するというのが、それだけ狭き門ってことね」
あなた「…………」
相澤「それから、サポートと対人戦闘にも長けている百々を指名しない理由は正直ない。あのまま3試合目を続けていたらこの順位がまた変動することも______」
先生はそうフォローしてくれているけど、つまりは色眼鏡で見られてたってこと。
"転校生"っていう肩書きが……。
八百万「流石ですわ。轟さん」
轟「ほとんど親の話題ありきだろ」
……轟くんも、大変だよね。
相澤「この結果を踏まえ、指名の有無に関係なく所謂職場体験ってのに行ってもらう」
職場体験か…………。
指名、どこから来てるんだろう。
ミッドナイト先生が教室に入ってきて、ヒーロー名を考えるためのペンと紙が配られた。
ヒーロー名……。
『俺の、代わりに……』
……。
ミッドナイト「じゃあそろそろ、できた人から発表してね」
言われて、まず1番に出たのは青山くん。
青山「輝きヒーロー……I can't stop tuink ling !!」
あなた「……………"キラキラが止められないよ"」
青山「that's right!」
え、何これ。
大喜利なの?
梅雨ちゃんがまともなのを出してくれたおかげで大喜利の空気は薄れて、皆続々と発表していく。
爆豪「"爆殺王"っ」
ミッドナイト「そういうのはやめたほうがいいわね」
爆豪「なんでだよ!!」
あなた「はいはーいっ!"煮込み下水糞野郎"でどうでしょう!」
爆豪「るぅっせぇてめぇブッコロスゾ!!!」
ミッドナイト「残っているのは爆豪くんと、飯田くん、緑谷くん、百々さんね?」
爆豪「人のクソみてぇなヒーロー名考えてる暇あったらてめぇの考えとけやぁぁぁっ!!」
あなた「あっははぁ、返す言葉もありませんっ!」
次いで飯田くんが名前そのまま"天哉"。
いずくんが"デク"と発表して、残ったのは私と爆豪くん。
……まぁ、決まってはいたんだけど。
やっぱり抵抗もあるし、私にその資格があるのかと不安になる。
それでも。
なるんだ。
ミッドナイト「おっ、百々さん決まった?」
あなた「…………はい」
緑谷「(あなたのヒーロー名かぁ……。パワー型だから可愛いのはつけにくいかな?それに自分の名字があまり好きじゃないみたいだし、百の入ってるのも付けないはずだからつまり_____)」
皆に見えるように立てて、すぅっと息を吸った。
あなた「私の、ヒーロー名は_____」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!