第74話

相澤先生.°
21,800
2020/07/27 11:03
あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°




帰りに相澤先生から携帯借りよう……バイト増やしてって連絡入れなきゃ。



職員室に向かうと、待っていたかのようにお目当の先生が出てきた。



相澤「おお、いい所にいた」


あなた「おぉっ!私も同じこと考えてました!」


相澤「ああそうか。じゃあこっち来い」




華麗に受け流されて、言われるまま移動。



なぜか校長室に通された。




あなた「失礼します……」


根津「やぁ。昨日はお疲れ様」


あなた「どうも……?」




根津校長の横には、いかにも位の高そうな服に身を包んだ人と犬……というか、面構さん?



根津「保須市警察署署長の面構さんと、ヒーロー協会の三枝さんだよっ」


面構「やぁ、その後どうだい?」


あなた「あ……はい、お陰様で」




何の用……?



頭を下げると上げるように促されて、言われるままソファーに腰を下ろした。





相澤「朗報だ。んな身構えんな」


あなた「朗報……?」


根津「奨励金の話さ」

  

奨励金……?




三枝「今回、ヒーロー殺しの一件で多大な功績を残した貴女に……教会から奨励金を贈呈する事が決まりました」


あなた「…………ぅえ、お金貰えるの!?」


相澤「……」


あなた「、すみません」




ギロッと睨まれて、小さく謝ると面構さんは はははっと笑った。



面構「本来、ふるいにかけられた国内の有望なヒーローの卵に贈呈される物なんだが……君の実績はそれに値すると判断があったんだワン」


三枝「……まぁ、"その内条件に合う生徒にのみ"ってのがあるんだけどね……」




……条件?




面構「資産額だワン」


あなた「……あー、」




そりゃ私が選ばれる訳だ。


貯金額0円だし。




三枝「それでその額なんだけど……実績を踏まえた報酬額、それから奨学金制度_____あ、給付型ね。あとは厚生労働省からの生活支援金+______」




おぉっと?結構電卓叩いてらっしゃいますが。





三枝「こんなものかしら」


あなた「ごふぉっ、」


面構「ははっ、相変わらず分かりやすい反応するワンねぇ」




提示された金額を見て驚いた。


そこから口座の設置、振り込みの準備が淡々と進む。




あなた「……よかった」


相澤「ん?」


あなた「いや……林間合宿用の衣服とか鞄とか、何も用意できないと思ってたから……。まぁ、夜走って取りに行けばよかったんだけど」


面構「……」


三枝「…………」





あ、今絶対「この子不憫だ」って思われた。



まぁ……いっか。お金貰えたらそれで。





相澤「お前……アパート退所の準備も進めとけ」


あなた「へ?」


根津「近いうちに寮の開設をしようと思っているんだ。まだ交渉中だから、他の生徒には内緒ね」




寮か……。




あなた「それって、入寮にどの位かかるんですか?」



相澤𝓈𝒾𝒹𝑒.°




手のかかる生徒だ。


言う事聞かねぇし、勝手に暴走するし。



芦田とはしゃぐあいつはいつも楽しそうで、その周りは常に笑顔で溢れている。



俺とは真逆だ。




実力を持っておきながらそれを鼻にかけない。




こいつなら……今までにないヒーローになれるかもしれない。





だからこそ、少し他の生徒より厳しく当たってしまっていた。





だが普段表に出している天真爛漫さとはかけ離れた雰囲気を、同時に待っている。




あなた「今のアパート、家賃が3万4千円で水道光熱費が4千円、食費が1万6千円でその他もろもろが4万円……約10万円の生活費を、毎日のバイトでなんとか補っています。こう言うのもあれだけど……超格安の訳あり物件なんです。これ以上金額が増えていくとどうしても負担が_____」



こんな風に、自身で稼いで生計を維持している女子高生が今までいただろうか。


当たり前にいるはずの両親は他界、身寄りもない上に皮肉にもの標的はこの雄英……か。



根津「それは_______」


相澤「奨学金の制度はそこにも適用される。入寮費も食費も、生活費は全て学校側が負担するから心配すんな」


根津「相澤く________」


相澤「ですよね?」



俺の問いかけに、校長は少し考えてから小さく頷いた。



百々は安心した様に顔を綻ばせ、校長室を後にした。






根津「……またプレゼントマイクくんにとやかく言われるかもね」


相澤「でしょうね……」



入寮費、食費負担なんて制度はない。


「どこからそんな金出すんだ」って言われそうだが、そんな事を考えてられないくらい俺にしては珍しく焦ってしまった。




年端もいかないあいつが……。


あんなに生徒の輪の中で幸せそうに笑うあいつが……。


誰より皆の無事と成功を祈っているあいつが……。



金の事で道半ば諦めるなど教育者として……1人の男として、どうしても見過ごせなかった。




相澤「俺が払いますよ。自身の子の教育費だと思えば、安いもんです」



根津「本当に……君は生徒を愛しているね」



相澤「やめてください」



根津「………良からぬ方向に向かない様、気をつけるんだよ」



相澤「……やめてください」






いや……15も下のあいつに、そんな感情抱く訳がない。






絶対に……。







✂︎_________________________



実はまだアニメ仮免の1話までしか見てないからヒーロー協会が実在するのか(ワンパンマンの受け売りですこれは)知らないんで三枝さんも創作です。笑

プリ小説オーディオドラマ