第90話

完全敗北.°
20,602
2020/08/08 01:41
爆豪くんか……それ以外か?


どっちを救うって……決まってる。





あなた「愚問______"どっちも救う"に決まってる!」




拳をキュッと握り、自身の顔めがけてパンチを放った。



死柄木自身に攻撃したんじゃ向こうの思うツボだ。




多少の衝撃で死柄木から離れることはできるはずだから、痛みは我慢して回復すれば逃げれr_____、!?




あなた「ぐぁ……、黒、霧……クソッ、いつ、から……」




私の拳はいつの間にかそこに現れた黒霧のゲートを通り自身の腹に押し入った。


力をセーブしていたので内臓損傷まではいかないだろうけど……吐きそう。





死柄木「どっちも救う方法は1つだけだ」





目の前に、黒霧のゲートが広がって。







死柄木「ここをくぐれ。自分の意思で俺の元に来るなら、誰も殺しはしない」



あなた「……あん、たの……意思1つで左右される程、皆は弱く、ない!」



死柄木「それはどうかな……見てみる?」




首に手を当てがったまま崖の淵に立たされて、下を向かされる。




黒煙、青い炎、各地で広がる土煙。




死柄木「今の所は命を落とした奴もいないみたいだけど……それも時間の問題かもね?」



あなた「…………、」



死柄木「お前がここで反抗的な態度を取るならその都度1人殺していこう」



あなた「……!?」



死柄木「そうだな……緑谷出久からにしようか」



あなた「……いずくんに、手ぇ出すな……!」




湿っぽく笑って、死柄木は私の首に当てた指の力を少し緩めた。





死柄木「守りたいよなぁ……?仲間。お前の判断ひとつで守れるんだ……悪い話じゃないだろう」



あなた「………………、」



死柄木「も話したいって言ってる……もう一回言う。俺の手元に来い」



あなた「……〜っ、」



黒霧「さぁ。通ってください」



あなた「………………」







いずくん……。




爆豪くん……。




三奈ちゃん……。




轟くん……。




切島くん……。




お茶子ちゃん……。




梅雨ちゃん……。





皆を…………。








守りたい。






守りたいから、に来た。







救いたかった。





私の手の届く全てを、救いたかった。






今、今救えるのは……救う、方法は_______。






1つ、なのかな……?









緑谷𝓈𝒾𝒹𝑒.°




ガラス玉に閉じ込められたかっちゃんと常闇くんを障子くんが取り返してくれて、距離を取るために離れようとした時。



僕らの目の前に、大きな黒いモヤが立ちはだかった。




障子「こ、こいつは……!」


轟「USJにいた……!」


緑谷「ワープの……!!」



黒霧「合図から5分経ちました。行きますよ。荼毘」


?「ごめんねっ、出久くんまたねっ」



さっき僕に馬乗りになってきた女の子のヴィランと、言動がおかしかった奴が続けてゲートをくぐった。




?「待て。まだ目標が_________」



?「癖だよぉ。マジックの基本でね。物を見せびらかす時ってのは、見せたくないものがある時だぜ?」



マントの奴が仮面を取り下を出す。



その上には、ラムネ色のガラス玉が2つ。



……まさか。




パチンと指を鳴らすと、障子くんの持っていたガラス玉の中身が飛び出した。




轟「俺の氷か!」



緑谷「くそ!!」



3人でマント服に向かって全力で走る。



緑谷「待てぇぇぇぇぇ!!!!」


?「そんじゃ、お後がよろしいようd_____」




ピシィィッ!!!




緑谷「!!?青山くん!」



茂みの中から発射されたネビルレーザーが仮面を破り、口内あったガラス玉が外に飛び出た。




緑谷「!!!?」




突然の痛みに転んでしまった僕の両脇で、轟くんと障子くんがガラス玉に手を伸ばす。



パシィッ!




障子くんがなんとかガラス玉を掴み、だけどギリギリのところで轟くんの手が届かないうちにつぎはぎの男がそれを奪い取った。




?「確認だ。解除しろ」


?「俺のショーが台無しだ!」




パチンっと指を弾き、障子くんの手元から現れたのは常闇くん。


そして、つぎはぎの男の手元に姿を現したかっちゃんは、そいつに首を掴まれて目を開けた。




?「問題、無し_________」




ゆっくりと、ゲートに下がっていく。




緑谷「かっちゃん!!!!!!」



爆豪「……、」



緑谷「かっちゃぁぁぁぁん!!!!」



爆豪「……来んな……っ、デク______」



?「_______お前達は、ばかりだな」






つぎはぎの男は顎を突き出して僕達を見回し、意味深に嘲笑した。







僕が伸ばした手が届く寸前で、ゲートはサッと閉まった。





緑谷「っ、……あ"…ぅ、う、あ……あ"あ"ぁぁぁぁぁぁ!!!!」






僕達はこの日。







ヒーローを目指す者として、ヴィラン達に______。






完全敗北した。

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