芦戸「轟〜!こっちにも火頂戴〜」
釜戸に火を付けて回っている轟くんをじっと見ていると、「なんだ?」と尋ねられた。
あなた「や……なんか、不思議だよね。熱くないの?」
今更だけど、自身の体から氷とか炎が出るってどんな感じなんだろう。
掌に乗っかる火種を見ながら聞くと、轟くんは数秒それを見つめた。
轟「特になにも……」
あなた「へぇ……掌が特殊なのかな?」
火を木に移して立ち上がった轟くんは、スッと左手を私に広げた。
轟「触ってみるか?」
あなた「あ、いいの?」
芦戸「(轟っ、ナチュラルにボディタッチを要求したぞ!)」
麗日「(そんであなたちゃんなんとも思ってへん!)」
?なんか見られてる……。
両手を伸ばしてその左手に触れようとすると、瞬間私の首に誰かの腕が回った。
こんな乱暴な事するのは_________。
爆豪「ほくろ野郎、てめぇこっちで玉ねぎ切れや」
あなた「……え?」
やっぱり爆豪くんだ、と確認したのも束の間。
グイッと引き寄せられて、机の方へと連れて行かれた。
あなた「いちいち乱暴だよね……」
爆豪「あ"ぁ!?」
他の野菜は切り分けられていて、残ってるのは玉ねぎだけだった。
爆豪「誰も切らねぇんだよめんどくせぇ」
包丁と玉ねぎを持って、トントントンッと隣で切っている。
……え、すご。
あなた「爆豪家は皆料理できるの?」
爆豪「は?料理"できる"も"できねぇ"もねぇだろ」
あなた「…………」
ザシュッ
あなた「痛……」
爆豪「!?」
蛙吸「あなたちゃん、大丈夫?今結構鈍い音がしたけど……」
あなた「あっ、平気平気〜!」
玉ねぎって滑るんだ……。
教訓にしておこう、と流血している左手の人差し指に回復を施そうとすると、手首を掴まれて寄せられた。
爆豪「てめぇマジなんもできねぇな」
あなた「むっ……教えてもらったらできるもん!」
怪我しているところを凝視すると、チッ と舌を鳴らした。
絆創膏でも貼ってくれるのかな……?
回復すれば済む話だけど。
芦戸「轟〜っ火ぃ消えそう!」
轟「ああ」
轟くん……日常的に左を使うこと、慣れてきてるのかな。
良い事……だよね?
爆豪「……んな半分野郎が気になるか」
あなた「_______え?」
釜戸の方に視線をやっていると低いトーンでそう言われて、視線を戻すと血が垂れる私の指をぱくりと咥えた。
あなた「……。…………………〜っな、!?/////」
爆豪「…………」
傷口に舌の感触が伝わって、じんじんと痛む。
あなた「ちょ、待っ…………」
ヌチュ、
私の指を解放したと共に、その形の良い口元から湿った音が聞こえた。
爆豪「てめぇはいちいちムカつくな」
あなた「〜っはぁ!?///」
何それ!?
なんでムカつくの!?
しかもなんでそれで私の指食べるの!?
芦戸「(ごめんあなた……ちゃっかり見てたよ)」
麗日「(爆豪くん……分かりやすいな)」
切島「(マジか!?マジか爆豪!!!)」
あなた「……そんなにお腹空いてたの?」
爆豪「……てめぇマジぶっ殺す」
……意味分からない。
あなた「もう………………何このバクバク……///////」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!