第28話

一緒に帰れ.°
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2020/08/02 03:46
あなた「疲れた……」


芦戸「同じく……」



みっちり練習してから、明日筋肉痛大丈夫かな……?とすっかり“全回復”を忘れて呆けていた私の机に、バンっと手が乗っかった。



あなた「……爆豪くん?どしたの」



机に顎を付けたまま上目遣いで見やると、何やら怒ったような顔で口を開いた。



爆豪「今日俺と一緒に帰りやがれクソほくろ野郎」


あなた「_________え」



「「「「!!!?」」」」



芦戸「ばっ、爆豪まで……!?」



爆豪「うっせぇ「まで」ってなんだ「まで」って!あ"ぁ!?」




あなた「…………いいけど」



「「「「(いいんだ……!?)」」」」




また「勝負しろ」とか言われるのかな……?


するなら明日でいいじゃんね。



帰路について、校門から出る。



爆豪「…………」



何……ずっと黙ってるけど。



あなた「何か話があるんじゃないの?」



私家近いし……あんまり長引かせると帰れなくなるんだけど。



爆豪「るっせぇ!!!」



えぇ、理不尽すぎない!?



爆豪「おい、ほくろ野郎」


あなた「……あなたですーだ!」


爆豪「……チッ、あなた」    




おぉ??


ちゃんと名前呼んだよ……!なんか感激!!



あなた「ふふ、なーに?」


爆豪「何笑ってんだコロスゾ!!」 


あなた「ぷっはは!……あ、私家ここなんだけど」


爆豪「!?」



流石の近さに驚いたのか勢いよく私の指差す方を見て、少し静止した。


まぁ……中々人の住めたようなアパートじゃないしね。


訳あり物件だし。



怪奇現象あるし。




爆豪「……そうかよ」


あなた「…………びっくりした?おんぼろで」


爆豪「してねぇ。どっちかっつうとお前が学校の近くに住んでることがびっくりだ」


あなた「……なんで?」


爆豪「隣の県から走ってきててもおかしくないからな」


あなた「あのねぇ……、」




まともな会話できそうにないし、とりあえず荷物を置いてくるから待ってるように伝えた。


軋む錆びた階段を上がって、鍵をさして立て付けの悪い戸を開ける。




あなた「_________ただいま」



爆豪「誰もいねぇじゃねぇか」


あなた「ふわっっ!!!?」





後ろからの声に驚いて振り返ると、当然のように立っている爆豪くん。


待ってろって言ったのに……。




あなた「今のは家に言ったの!」  


爆豪「あぁそうかよ。…………、生活感ねぇ部屋だな」


あなた「ジロジロ見んな!!」




躊躇いなく足を踏み入れた爆豪くんの頭をバシッと叩いて、入り口付近に鞄を置いた。


爆豪くんはじーっと足元を見ている。




あなた「……他の人の靴はないよ。言わなかったっけ、私家族死んでんだよ」



爆豪「……んで俺がてめぇの事情いちいち覚えてると思ってんだよ知るか」



あなた「ふふ……そーだね」




爆豪くんのその返答は、余計な気を遣われるよりずっと心地よく感じられた。




あなた「で、話ってなんなの?」


爆豪「……」



キィーーーー、ガチャ


開けっぱなしにしていたドアを後ろに回した手で閉めて、顔を伏せる。




あなた「……爆豪くん?」
 


そのまま、スタスタとこちらに寄ってきて。


思わず後ずさると、古い床板の上に敷いた猫柄のカーペットに尻餅をついてしまった。



あなた「痛ぅ……」



閉じた目を開くと、至近距離に爆豪くんの顔。



あなた「え…………なに、」



私の腰の側に足を付いて、手首をキュッと掴む。


慌てて急いで振り払おうとすると、床についていたもう片方を払われて体勢を崩した。


その片手を膝で押さえつけられる。


あなた「ちょ……、セコいって!こんなんで勝てて嬉しいわけ!?」



爆豪くんならもっとちゃんとした形で仕掛けてくると思ったのに……!



掴まれた手が、唯一私が床に倒れ込まないための綱で。


なんとか踏まれている方の手を動かそうとするけど、力が入らない。




ただ、威圧感のある目に睨まれて______。





爆豪「おい、ほくろ野_______“あなた”」




あなた「_________!」




今度は自分から、私の名を口にした。




そして_________。
















爆豪「俺とキスしろや」









あなた「_________!!!?」

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