N side_
お昼より少し前、俺と相葉さんは楽屋へと入った。
楽屋には新聞を広げた翔ちゃんが座っていたが、俺たちが楽屋に入るなり不思議そうに目を丸くした。
櫻「…あれ、二人一緒に来るなんて珍しいね?」
そう、俺と相葉さんは普段楽屋入りする時間が全く違うのだ。
相葉さんは早くて、いつも翔ちゃんの次くらいに来てるのだが、
反対に俺はいつも時間ギリギリに来るので、そりゃこんな早く来るのだから翔ちゃんも驚くだろう。
「俺今日早く起きたからさ、
久しぶりにこんな早めに来たかもー、」
敢えて泊まったとは言わず、隣の相葉さんにも意味ありげな笑みを浮かべ、翔ちゃんが目を逸らした隙に人差し指を口元に立てた。
相葉さんは不思議そうな顔をしていたが、
いいじゃん、どうせ叶わないなら匂わせくらいさせてよ…
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収録後、俺が楽屋で着替えをしていると、突然翔ちゃんが俺を呼び出した。
楽屋を出て少しした所にある自販機前で、
翔ちゃんは周りを確認して小声でこう聞いてきた。
櫻「…ニノ、昨日相葉くんの家に泊まった?」
「…あら、バレました?
…でもどうして?」
翔ちゃんは眉間に少しシワを寄せる。
櫻「その…気持ち悪いかもだけど、ニノ相葉くんと同じ匂いがしたっていうか…」
「あー、シャンプーの香りね。
相葉さんのシャンプーかなり香り強いから、それじゃない?」
そう答えると、翔ちゃんも納得したように頷いた。
しかし、また目を細めて…
櫻「…その、何で隠してたの?」
「え?」
櫻「いや…何か妙な間あったしさ、もしかして…つ、付き合ってたりとかしてんじゃないかって…」
…まさかの匂わせ成功?
櫻「い、いや!良いんだよ!?メンバー間で恋愛感情を持つってのもおかしくないし!俺は受け入れたい!」
焦りながら必死にそう言う翔ちゃんに思わず笑みが溢れる。
「ふふ…付き合ってる訳ないじゃん、
ごめんなさいね、ちょっと遊び心が出ちゃって。まさか翔ちゃんがそんな取り乱すだなんて…ふふ、」
そう言うと、翔ちゃんは小さく息を吐いて「なんだよ、!」と呆れて笑った。
…付き合って、ない、んだもんな。
てか、付き合えないし…
…自分から仕掛けておいて、何だか虚しくなってきた。
本当、何してんだよ俺…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!