土曜日になり辰哉くんの家へ向かう。
いつもは私の家に来ることが多かったから辰哉くんの家に行くのは数年ぶりだ。
予定の時刻になりチャイムを鳴らした。
-ピンポーン
「はーい」
髪がまだ濡れたままの状態で辰哉くんが出迎えてくれた。
「ごめん。ちょっと寝坊しちゃってさ今シャワー浴びたとこなんだわ。髪乾かしてくるからリビングで待てる?」
『うん、いいよ…』
髪からぽたぽたと落ちる雫が辰哉くんの色気を増して直視が出来なく下を向く。
そんな私に辰哉くんは気づいてからかってくる。
「あれ、あなたもしかして照れてる?笑」
『うるさいなぁ、照れてないよっ。』
「だって顔赤いよ?笑」
『もー!風邪ひくよ?』
「はーい。少し待ってて」
そう言われリビングのソファに腰掛けた。
数年前と変わらない光景に安心しつつ懐かしさが込み上げてくる。
テレビ台の前に小さい頃の辰哉くんの写真がズラリと並べられてるこの一角が昔から大好きだった。
数分後髪を乾かし終わった辰哉くんが戻ってきた。
「お待たせー。何見てんの?」
『辰哉くんの写真。何回見ても可愛いなぁと思って。』
「かっこいいって言ってもらえる?」
『はいはい。かっこいいよ。』
「おぉぉい!適当に言うな笑」
『あはははは。ごめんごめん。笑』
「許す。笑」
『そうだ。材料どうしよっか?』
「一緒に買いに行く?」
『行くー\(^^)/』
「めちゃくちゃ嬉しそうじゃん。笑」
『だって辰哉くんに奢ってもらえるからね〜』
「おい!なんだよ人のこと財布だと思って!笑」
本当は一緒に買い出しに行くなんて同棲中のカップルみたいで嬉しい。…って素直に言いたいのに照れ隠しで可愛くないことを言ってしまう自分が嫌になる。
『お財布様いつもありがとうございます』
「財布言うな!笑 でもその代わりあなたに1つわがまま言ってもいい?」
『うん、いいけど…なに?』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!