第12話

scene.12
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2022/08/04 03:55
………おっっっっそい!
どこでなにやってんの?!
「傘買ってくるから」じゃないよ!
どこまで買いに行ってんの!
もう3、40分は経ってんだけど?!
さすがに待ちくたびれたので、仕方なく雨の中に飛び出した。


途中で見つけたバイクを確認すると、アイツのインパルスだったため、この辺にいるのはわかるんだけど。

全く止まない雨に嫌気がさしてまた木々の中に入った。
虫は無理だけど、走ればセーフでしょ。
ダッシュで走ると、街灯の明かりが見えてきた。
Y o u
あ、抜け道。
やっと出られると思い速度をあげると、何やら騒がしい。
何人かの男たちが殴り合いをしているようだ。

こんなとこでなにやってんの。
邪魔なんだけど?!
と思いつつ耳をすませば、聞きなれた声がした。
「タケミっちに1億円」
「ヒナも、武道くんに1億円!」
「エマも!」
ダブルデートとか言ってたくせに、なにやってんのよ。
知り合いだと、出たくても出れないじゃん?!

とりあえず動向を見守るしかないか。


それでも、決着は案外早く着いた。
木の陰から覗いていたけど、そろそろ出ても良さそう。

と思ったのも束の間、残りの野郎どもがナイフを拾って仕返しをしようとしている。



武道はヒナとエマを逃がしてくれたし、やっぱり出てもいい頃だろう。
Y o u
ナイス、武道。
漢の根性見せたじゃん。
花 垣 武 道
え、あなたさん?!
Y o u
はいはい、邪魔邪魔〜。
怪我した木偶の坊がそんなとこに突っ立っててもしょうがないでしょ。
下がってなよ。
龍 宮 寺 堅
さりげなく貶してんじゃねぇよ笑
久しぶりに血が騒いできた。
Y o u
三ツ谷のバカヤロウのせいで、まだイライラが収まってないんだよね。
ちょっと付き合ってくれる?
「女だからって容赦しねぇぞ」
「死ねやゴルァ!!」
殴りかかってきたけど、余裕で躱せる速度だし。
Y o u
楽しみ甲斐がないんだよ!
イライラを散らすように殴り散らかして、相手もヘトヘトらしい。
途中で手伝いに来てくれた武道の友達も、何とかなったらしい。
Y o u
ダッさ。
そう吐き捨てて後ろを見れば、どこかに隠れていたらしいもう1人が、落ちたナイフを拾って2人を襲おうとしていた。
Y o u
この、なにやって、!
雨の音で足音に気づいていない2人。
殴っても吹っ飛んだナイフで二次災害が起きかねない。
仕方なく自分を犠牲にして、2人を守った。
刺された傷を抑えながら、相手を蹴り倒し、ナイフを捨てた。
Y o u
痛った…
腕を出すつもりが、身長差でお腹を刺される。
これ深くない?え、大丈夫そ?
花 垣 武 道
あなたさん!
龍 宮 寺 堅
おい、お前、!
Y o u
世話焼かせんなって。
自分にもアドレナリンが出ているのか、そこまで痛さは感じなかった。

そして、タイミングよくヒナとエマが戻ってきて、救急車も来た。
佐 野 エ マ
ちょ、ちょっと?!あなたまで怪我してるじゃない?!っていうか、なんでいるの?!
Y o u
いろいろあってさ〜。
橘 ヒ ナ タ
もう一台救急車を呼ばないと、!
Y o u
ありがとう。ヒナもエマも、先に来た方追っかけて病院行きな。
私は自分で行けるからさ。
佐 野 エ マ
でも…
Y o u
龍の方がヤバそうだもん、私は大丈夫!
すぐに行くから、先に伝言頼んでもいいかな?
三ツ谷にさ、「浴衣、汚してごめんね」って言っといてくれる?
佐 野 エ マ
…っ!わかった。ほんとに、なんかあったら連絡してよ?!
と半泣きで去っていった。
Y o u
はあ、痛…
みんなが行ったのを確認して、その場に倒れ込む。
天を仰ぐと顔に大粒の雨が打ち付けた。
救急車が来るまで意識が持つかな。私の人生はここで終わるのだろうか。しょうもない人生だ。
目を閉じて走馬灯に浸ろうとすれば、如何わしさを含んだ声が聞こえた。
「あっれ〜?あなたじゃん。こんなとこで何寝そべってんだよ。」

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