………おっっっっそい!
どこでなにやってんの?!
「傘買ってくるから」じゃないよ!
どこまで買いに行ってんの!
もう3、40分は経ってんだけど?!
さすがに待ちくたびれたので、仕方なく雨の中に飛び出した。
途中で見つけたバイクを確認すると、アイツのインパルスだったため、この辺にいるのはわかるんだけど。
全く止まない雨に嫌気がさしてまた木々の中に入った。
虫は無理だけど、走ればセーフでしょ。
ダッシュで走ると、街灯の明かりが見えてきた。
やっと出られると思い速度をあげると、何やら騒がしい。
何人かの男たちが殴り合いをしているようだ。
こんなとこでなにやってんの。
邪魔なんだけど?!
と思いつつ耳をすませば、聞きなれた声がした。
「タケミっちに1億円」
「ヒナも、武道くんに1億円!」
「エマも!」
ダブルデートとか言ってたくせに、なにやってんのよ。
知り合いだと、出たくても出れないじゃん?!
とりあえず動向を見守るしかないか。
それでも、決着は案外早く着いた。
木の陰から覗いていたけど、そろそろ出ても良さそう。
と思ったのも束の間、残りの野郎どもがナイフを拾って仕返しをしようとしている。
武道はヒナとエマを逃がしてくれたし、やっぱり出てもいい頃だろう。
久しぶりに血が騒いできた。
「女だからって容赦しねぇぞ」
「死ねやゴルァ!!」
殴りかかってきたけど、余裕で躱せる速度だし。
イライラを散らすように殴り散らかして、相手もヘトヘトらしい。
途中で手伝いに来てくれた武道の友達も、何とかなったらしい。
そう吐き捨てて後ろを見れば、どこかに隠れていたらしいもう1人が、落ちたナイフを拾って2人を襲おうとしていた。
雨の音で足音に気づいていない2人。
殴っても吹っ飛んだナイフで二次災害が起きかねない。
仕方なく自分を犠牲にして、2人を守った。
刺された傷を抑えながら、相手を蹴り倒し、ナイフを捨てた。
腕を出すつもりが、身長差でお腹を刺される。
これ深くない?え、大丈夫そ?
自分にもアドレナリンが出ているのか、そこまで痛さは感じなかった。
そして、タイミングよくヒナとエマが戻ってきて、救急車も来た。
と半泣きで去っていった。
みんなが行ったのを確認して、その場に倒れ込む。
天を仰ぐと顔に大粒の雨が打ち付けた。
救急車が来るまで意識が持つかな。私の人生はここで終わるのだろうか。しょうもない人生だ。
目を閉じて走馬灯に浸ろうとすれば、如何わしさを含んだ声が聞こえた。
「あっれ〜?あなたじゃん。こんなとこで何寝そべってんだよ。」
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!