「あっれ〜?あなたじゃん。こんなとこで何寝そべってんだよ。」
「風邪ひくぞ。」
「お前怪我してんの?ウケる。」
「なに、ここで死ぬの待ってんの?」
半ギレで目を開ければ、そこにいたのは最悪の人物だった。
血が滲む浴衣の上から傷口を抑え、体を起こそうとすると、それは叶わなかった。
渋々差し出された手を掴むと、軽々と抱き上げられてしまった。
受け流された。これだからこの人たちとの会話は嫌なんだ!
明るく、広い道まで運んでくれたようだ。
ケタケタと笑いながら去っていった二人の背を見つめ、改めて感謝した。
正直不安だったけど、気が紛れた。
久しぶりすぎたけどね。
そして漸く、救急車がやってきた。
その頃にはまともな返事が出来なかった。
いや、できるにはできるけど、受け応えがめんどくさかった。ここで言わないと後々めんどくさくなるけど、今はもう寝たかったから。
神様。死んでもいいかと思っていたけど、あの2人の助けに免じて、もう少しだけ生きてあげます。それに、まだみっちゃんに直接文句言ってないしね。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!