第12話

幸せなんか
31
2021/03/17 05:31
お母さん
桔平ッ...桔平ッ...
桔平
だッ......い、...じょ......ぶ
桔平
それ、より......りんなッ......
僕を抱えるお母さんを振りほどこうとしたけど全然力が入らなかった
お母さん
無理は辞めてッ...
桔平
やだッ......今しかないのッ.........
桔平
もう......後悔ッなんかしたくないッ...!
桔平
りんながッ......起きるまでッ...そばにッ...いる......
もう、どうせ死ぬんだ
最後ぐらい好きにしたっていいじゃんか
どうせ、これから起き上がれなくなって
お母さんの事も林菜の事も優空くんの事もわかんなくなる
お母さん
お願い...自分を大切にして...
大切にしたよ、だから殻に籠って何もかも投げ出して何も考えずにお父さんに従ったんだ
桔平
僕はもう......こどもじゃないよ...
お母さん
桔平ッ...
桔平
泣かないで......大丈夫だよ...
小さい頃の僕にそう言ってあげたい
林菜
き......ぺい...
桔平
林菜ッ...!
ゆっくり起き上がって手を握る
桔平
ごめんねッ......
林菜
指輪......
桔平
左手......み、て
林菜がゆっくり手を目の前に持ってくる
林菜
よかっ...た
桔平
ニコッ
林菜
桔平...?
バタッ













--------キリトリ線--------
林菜
桔平、もう...1日たったよ......起きて...
桔平
......
どんどん顔色が悪くなっていく桔平に不安が積もる
林菜
桔平は...幸せだった...?
林菜
桔平は、優しいよね......
林菜
ううぅっ......起きてッ...起きてッ...!
桔平
ぁ......
林菜
ッ...!
桔平
き......み、は......だ...れ......?
桔平はついにそこまで病気が侵攻してしまった
林菜
林菜っていうのッ...
初めてあった日私がその質問したよね
小さい頃隣の家の家族が嫁に逃げられたって聞いてた
学校から帰ると桔平が自分の家の門の前で立って外をキョロキョロ見渡していた
名前を聞いて何してるのかと聞くと
お母さんの帰りを待ってるって言ってた
その時の顔は一生忘れられない
口では
「お母さんは絶対に帰ってくる」
って言いながらも
顔は絶望した顔で何もかも諦めていた
それから毎日お外で一緒にお話して
いつも桔平が桔平のお父さんに連れられて帰ってしまう
いつもビクビクして暮らしてたよね。
桔平
りんなちゃん......
桔平
かわいい...なまえだね......
林菜
私たち、恋人なんだよ
桔平
恋、びと......?
桔平
うそだ...
桔平は笑いながら言う
桔平
僕を......好む人......いない...
林菜
ここにいるよ。
桔平
そっか...
そしてまた桔平は眠てしまった

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