僕を抱えるお母さんを振りほどこうとしたけど全然力が入らなかった
もう、どうせ死ぬんだ
最後ぐらい好きにしたっていいじゃんか
どうせ、これから起き上がれなくなって
お母さんの事も林菜の事も優空くんの事もわかんなくなる
大切にしたよ、だから殻に籠って何もかも投げ出して何も考えずにお父さんに従ったんだ
小さい頃の僕にそう言ってあげたい
ゆっくり起き上がって手を握る
林菜がゆっくり手を目の前に持ってくる
バタッ
--------キリトリ線--------
どんどん顔色が悪くなっていく桔平に不安が積もる
桔平はついにそこまで病気が侵攻してしまった
初めてあった日私がその質問したよね
小さい頃隣の家の家族が嫁に逃げられたって聞いてた
学校から帰ると桔平が自分の家の門の前で立って外をキョロキョロ見渡していた
名前を聞いて何してるのかと聞くと
お母さんの帰りを待ってるって言ってた
その時の顔は一生忘れられない
口では
「お母さんは絶対に帰ってくる」
って言いながらも
顔は絶望した顔で何もかも諦めていた
それから毎日お外で一緒にお話して
いつも桔平が桔平のお父さんに連れられて帰ってしまう
いつもビクビクして暮らしてたよね。
桔平は笑いながら言う
そしてまた桔平は眠てしまった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。