(しのぶさん、怒ると怖いんだな)
空はどんよりと曇っている。
(眠い…)
まだ夜が明け始めて来た時間なのにしのぶさんは訓練場に来て欲しいと言われた。
((ガラガラ
しのぶさんの前に竹刀が置いてあるのに私は気がついた。
(絶対凄くきついやつだ)
(しのぶさん、私そんなに出来ません…)
(しのぶさん、鬼過ぎる!!)
((トボトボ
そうして私は渋々走り出したが、
走り出して少しするともう、何も考えられないくらいに疲れてきて、さっきの事など考える余裕がなくなった。
(しのぶさ~ん!無理です無理です!)
(鬼過ぎますよ~!!)
(しのぶさ~ん!!)
私は心の中で叫んだ。
✫✫✫✫✫✫
全て終わったあと、しのぶさんがそんなことが言った。
(なにか引っかかるなぁ。)
(思いだした!)
昔、しのぶさんのいう呼吸と同じ様なものを母さんが教えてくれた気がする。
その中でも私が覚えてるのは、1番気に入っていた…
私はスゥと息を吸い、
技を出した。
どんよりと曇っていた空が一気に明るくなり、晴れた。
しのぶさんは少し興奮した様に言った。
私にも、鬼を倒すことが出来る力があるんだ。
これで、父さんと母さんの仇討ちをすることが出来るんだ。
この興奮はしばらく、冷めることは無かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!