その後、休み時間に何度か声をかけたのに...全部無視。
...泣きそうです。
一度も会話することなく、放課後を迎えた。
「な、奈由ちゃぁぁん!!!!」
イケメンマスター(仮)の奈由ちゃんに、昨日あったことを大まかに説明した。
「...って事なんだけど、どう思う?」
すると、奈由ちゃんは勝ち誇ったような顔でこっちを見る。
「...私が言ったら、意味ない。自分で気づくべし!!!」
「っえー!!!っそんなぁ...」
「...じゃあ、一つだけ教えたげるわ!
...天宮くんは、佳莉のこと嫌ってないよ。
むしろ...」
「よ、よかった!!!」
嫌ってないと聞いて、思わず叫んでしまい、クラスメイトに見られたらが、気にしない。
奈由ちゃんが何か言おうとしてたけど、まぁいっか。
「...佳莉、今すべきことは?」
「天宮くんと、話す!!!」
「うん...そうなんだけどね、謝るって目的で話すんだよ?」
「もちろん!」
「じゃ、先帰ってるよ〜」
このまま話せないなんて、絶対嫌。
…彼が、私を嫌ってたとしても、私は何度でも当たって砕ける。
「...あ、天宮くん!」
彼の席に近寄り、少し上ずった声で名前を呼んだ。
...振り返った彼の目は、少し冷たかった。
「...何?」
「あ、あの...ちょっとお話したいから、空き教室行かない?」
「...ここで話せば。」
「こ、ここじゃ話したくない。」
「...なら、行かない。」
...何、この人。
...ふつふつと、私の心に「怒り」という感情が湧いてきた。
今の天宮くんは、行きたくないと駄々をこねてる子供だ。
「...行かない、じゃなくて、来てって言ってんの。」
いつもより低めの声が出て、天宮くんも少し動揺しているようだった。
.........やっちゃった。
でも、ようやく席を立った天宮くんを見て、「たまには立場逆転もいいかも」なんて思い始めた頃だった。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
二人で教室から一番近い、空き教室に入った。
沈黙が、私達を気まづくさせる。
...昨日まで、仲良く帰ってたのになぁ...
「...で、何?」
不機嫌な顔をした天宮くんが言う。
「...えっとね...私、天宮くんに何か悪いことしちゃったかな?」
「…んなの、自分で考えろよ。」
「...分からないから、聞いてるんだけど。」
「...じゃあ分からないままでいい。」
「...何それ。」
「...もうお前とは喋れる気がしない。」
「...だから、どうしてそうな...」
「…お前に彼氏がいたの知んなくて、帰ろうとか誘ってごめんな、んじゃ。」
...は?
私、彼氏なんていつ作ったっけ。
天宮くん、彼氏とか言ってたよね?
その時、私の中には誤解されるような、とある一つの行動が浮かんできた。
...もしかして、あのハグのせい?
だとしたら、辻褄が合う。
あの時は、思いっきり抱きしめあってたし、天宮くんのことを忘れちゃうくらい喜んでた。
...多分私なら、天宮くんが女の子とハグしてたら、彼女って疑う。
やらかしちゃった...(2回目)
...でも、きっと大丈夫。
話せば、分かってくれるよね?
「っま、まって!」
扉に手をかけていた天宮くんをすかさず止めた。
「...まだあんのかよ。」
「私、彼氏いないからね?」
「...は?
...じゃあ、昨日の抱き合ってた奴はなんなの?」
「上京して、5年ぶりに戻ってきた幼馴染だよ。」
「.....まじか。」
「...まじです。」
「...でも、目の前で抱きつかれるのはムカついた。」
「...あの時は、気持ちが高ぶってて調子に乗りました...」
「...お前は、俺だけを見てればいーんだよ。」
……何、この俺様発言。
自己中心的な発言なはずなのに...
どうしてこんなに胸が高鳴るんだろう。
天宮くん、心臓に悪いです。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆
誤解(?)が解け、昨日と同じように家まで送ってもらった。
その後、流星くんに「ラブラブー!!!」と茶化されたことは...天宮くんに絶対言えません。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。