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「もう、桜が咲く季節かぁ...」
親友の菜由(なゆ)ちゃんと会話している中、窓の外を見て、ふと思った。
ここ、2階からは裏庭に咲いている、桜の木の蕾が見える。
...私達、3年生はあと4日で卒業式。
無事、志望校に受かり、ホッとしている頃でもある。
入学式後、次々と固まっていく女子グループを見て、焦っていた所に、菜由ちゃんが話しかけてきてくれたんだ。
...懐かしいなぁ...。
まだ卒業したわけじゃないのに、卒業した気分になっていた私に...天宮くんは、声をかけてきた。
「桜、か...もうすぐ、卒業式だな。」
窓を見つめる私の真後ろに立っている、天宮くんに高鳴る胸を落ち着かせ、言葉を返した。
「...このクラスのみんなとも、もう離れ離れかぁ...」
「...寂しくなるな。」
「...ね。」
本当は...このクラスが離れ離れになっても、そこまで寂しくなかったりする。
何せ、菜由ちゃんや、仲のいい友達はみんな、ここから近い私と同じ大学だから。
...私が寂しいのは...
天宮くんと、離れ離れになることだよ。
「...ねぇ、天宮くん。」
「ん?」
「...大学、どこ行くの?」
すると、困ったように...
「んー...秘密。」
「...えー、何それ。」
...なんで、教えてくれないのかな?
知られるの、そんなに嫌?
すると、顔に出ていたようで
「知られるのが嫌とか、そういうんじゃない。
...けど、秘密。」
口に人差し指を当て、ポーズをする天宮くん。
...いちいち、私をときめかさないでほしいよ...。
みなさんご存知の通り...
私は...天宮くんが好きです!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。