「…っ、ん、ゔぅ…」
ぼんやりとした橙色の光の中で、自分を見下ろす影。
涙と涎でぐずぐずになってしまっている顔と、与え続けられる快感に弄ばれる下半身。
「…あんま煽んなよ」
少し荒い呼吸をする北斗が、眉間に皺を寄せて俺の頬を撫でる。
まともな返事も出来ず、必死に北斗にしがみついて首を振った。
全身が心臓になってしまったように、脳内でドクドクと音を立てている。
北斗に触られるところすべてが焼けるように熱い。
「はっ、…ぅ、」
北斗の腰と手の速度が上がったのと同時に、情けなく北斗の掌の中で達した。
俺を見下ろしながら、尚、腰の動きも手の動きも止めない北斗が、耳元で、
“ もう少し頑張ろっか ”
と口角を少し上げて呟いた。
咄嗟に逃げようと思った時には、下半身を襲った、今まで経験したことのない感覚。
達したばかりで赤黒くもたげた自分の先端を、さらに擦り始めた北斗の手を、止めようと焦って手を伸ばす。
「やめ、北斗、…!」
伸ばした俺の手を片手で軽々と束ねて、頭上に括りあげた北斗が、俺の首筋に噛み付いた。
「、っやだ…」
自分の体液が潤滑剤となり、ぬるぬると先端が刺激され、尿意にも似た快楽に目を瞑った瞬間、
自分の首元まで温かいものが飛び散った。
尚、止まらない北斗の手の動きに合わせ、びくびくと溢れ出す。
「ぅ゛…や、」
やっと止まったかと思うと、今度は膝ごと抱え込まれ、また北斗の熱いものが俺の隙間を埋める。
「…ごめん、止まんないわ」
そう言って、一瞬顔を歪めた北斗は、俺の腹の上にやっと果てた。
そのまま俺の上に覆い被さり、荒い呼吸のまま、顔を少し上げた北斗にまた口を塞がれて、口の中までさらに犯されるようなキス。
舌をじゅるりと吸われ、唇がやっと離れたかと思うと、今度は鎖骨に吸い付かれ、ちくりと痛みが走った。
やっと気が済んだのか、俺の横に倒れ込んで、ふぅっと息を吐ききった。
「……大我」
名前を呼ばれ、力なく目線だけを向けると、鼻で笑うように、微かに口角をあげた。
「…怒った?」
さっきまで目の奥をぎらつかせていたはずの男が、嘘のように優しく問いかけてくる。
「……ひどい」
「大我くんお漏らししちゃったもんね」
「もう嫌いだ」
ごめんて〜、と頭を撫でながら、鼻先にキスを落とし、
反応が可愛くてつい、といい声といい顔で呟くもんだから、もう少しで口から出かけた酷めの文句をごくりと飲み込んだ。
「露天風呂行っとく?」
どうしようかな、と背中を向けると、首筋に北斗の鼻がツと当たった。
「…あんま怒んなよ、寂しいんだけど」
小さな声で「気持ちよかったんだからいいじゃん」と呟くもんだから、ほんの少しイラッとして、回された腕を噛んだ。
「痛っ、」
「一言多いんだよ」
しょうもないやり取りをしてる間も、もはや何で濡れているのかも分からない自分の身体を、早く洗い流したくて仕方ない。
腰と股関節が少し痛んで、自分で歩くのも億劫。
風呂まで運べという意味を込めて、黙って目を見て手を伸ばす。
「なに?そゆこと?」
えー、やだよー、と言いながらも、黙って手を伸ばす俺を横目で見て、
「大学ん時、思い出した…」と、渋々抱きかかえ、庭に向かって歩き出した。
露天風呂の周りは雪がほんのり溶けてつやつやと光っている。
「転けんなよ、」
怖くて首にしがみつくと、はいはい、と返事を返され、近くにあった桶で頭から一度ザバーっとお湯をかけられた。
「アチッ!」
思ったより熱いお湯に身震いをして、顔のお湯を拭うと、今度は抱き抱えられたまま、湯船の中にぽちゃんと足から着けてくれた。
「…ゔぅ、最高」
結構な量のお湯がざばりと溢れて、かなりの範囲に広がり、雪をじわじわと溶かした。
「このまま二回戦いく?」
とんでもないことを言いながら、前髪を掻き上げる北斗を横目に、俺もついにやにやとしながら口先まで沈み、ぶくぶくと息を吐いた。
「ちょっとこっちきて、」
お湯の中でふわりと抱きしめられ、背中に北斗の肌を感じる。
トクトクと優しく鳴る心臓の音に、何故だか無性に安心して、身体を預けて目をつぶる。
「……北斗、連れてきてくれて、ありがと」
恥ずかしくて、目を見て言えなかった言葉。
北斗は鼻で少し笑うと、「どういたしまして」とさらに強く俺を抱き寄せ、首筋にキスをした。
「素直な大我、可愛い」
いつもは素直じゃなくて悪かったな!と睨むつもりで振り返ると、不意に唇を塞がれた。
「ずっと可愛いよ、」
「っは、なん、急にっ…」
「もうさ、今日、妊娠させるかも」
そう言ってニヤッと笑った北斗に、男同士で妊娠なんて出来るはずないのに、不覚にもドキッとして、下腹部がうずいた。
continue…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。