第11話

湯煙-その参-
2,964
2021/05/04 17:13


「…っ、ん、ゔぅ…」





ぼんやりとした橙色の光の中で、自分を見下ろす影。




涙と涎でぐずぐずになってしまっている顔と、与え続けられる快感に弄ばれる下半身。






「…あんま煽んなよ」





少し荒い呼吸をする北斗が、眉間に皺を寄せて俺の頬を撫でる。






まともな返事も出来ず、必死に北斗にしがみついて首を振った。







全身が心臓になってしまったように、脳内でドクドクと音を立てている。





北斗に触られるところすべてが焼けるように熱い。







「はっ、…ぅ、」









北斗の腰と手の速度が上がったのと同時に、情けなく北斗の掌の中で達した。









俺を見下ろしながら、尚、腰の動きも手の動きも止めない北斗が、耳元で、






“ もう少し頑張ろっか ”







と口角を少し上げて呟いた。




咄嗟に逃げようと思った時には、下半身を襲った、今まで経験したことのない感覚。








達したばかりで赤黒くもたげた自分の先端を、さらに擦り始めた北斗の手を、止めようと焦って手を伸ばす。







「やめ、北斗、…!」








伸ばした俺の手を片手で軽々と束ねて、頭上に括りあげた北斗が、俺の首筋に噛み付いた。






「、っやだ…」






自分の体液が潤滑剤となり、ぬるぬると先端が刺激され、尿意にも似た快楽に目を瞑った瞬間、





自分の首元まで温かいものが飛び散った。
尚、止まらない北斗の手の動きに合わせ、びくびくと溢れ出す。





「ぅ゛…や、」





やっと止まったかと思うと、今度は膝ごと抱え込まれ、また北斗の熱いものが俺の隙間を埋める。






「…ごめん、止まんないわ」






そう言って、一瞬顔を歪めた北斗は、俺の腹の上にやっと果てた。






そのまま俺の上に覆い被さり、荒い呼吸のまま、顔を少し上げた北斗にまた口を塞がれて、口の中までさらに犯されるようなキス。





舌をじゅるりと吸われ、唇がやっと離れたかと思うと、今度は鎖骨に吸い付かれ、ちくりと痛みが走った。






やっと気が済んだのか、俺の横に倒れ込んで、ふぅっと息を吐ききった。






「……大我」






名前を呼ばれ、力なく目線だけを向けると、鼻で笑うように、微かに口角をあげた。







「…怒った?」





さっきまで目の奥をぎらつかせていたはずの男が、嘘のように優しく問いかけてくる。







「……ひどい」




「大我くんお漏らししちゃったもんね」




「もう嫌いだ」





ごめんて〜、と頭を撫でながら、鼻先にキスを落とし、



反応が可愛くてつい、といい声といい顔で呟くもんだから、もう少しで口から出かけた酷めの文句をごくりと飲み込んだ。






「露天風呂行っとく?」




どうしようかな、と背中を向けると、首筋に北斗の鼻がツと当たった。





「…あんま怒んなよ、寂しいんだけど」




小さな声で「気持ちよかったんだからいいじゃん」と呟くもんだから、ほんの少しイラッとして、回された腕を噛んだ。






「痛っ、」



「一言多いんだよ」





しょうもないやり取りをしてる間も、もはや何で濡れているのかも分からない自分の身体を、早く洗い流したくて仕方ない。





腰と股関節が少し痛んで、自分で歩くのも億劫。


風呂まで運べという意味を込めて、黙って目を見て手を伸ばす。





「なに?そゆこと?」




えー、やだよー、と言いながらも、黙って手を伸ばす俺を横目で見て、




「大学ん時、思い出した…」と、渋々抱きかかえ、庭に向かって歩き出した。





露天風呂の周りは雪がほんのり溶けてつやつやと光っている。





「転けんなよ、」






怖くて首にしがみつくと、はいはい、と返事を返され、近くにあった桶で頭から一度ザバーっとお湯をかけられた。





「アチッ!」






思ったより熱いお湯に身震いをして、顔のお湯を拭うと、今度は抱き抱えられたまま、湯船の中にぽちゃんと足から着けてくれた。





「…ゔぅ、最高」







結構な量のお湯がざばりと溢れて、かなりの範囲に広がり、雪をじわじわと溶かした。





「このまま二回戦いく?」





とんでもないことを言いながら、前髪を掻き上げる北斗を横目に、俺もついにやにやとしながら口先まで沈み、ぶくぶくと息を吐いた。





「ちょっとこっちきて、」





お湯の中でふわりと抱きしめられ、背中に北斗の肌を感じる。



トクトクと優しく鳴る心臓の音に、何故だか無性に安心して、身体を預けて目をつぶる。





「……北斗、連れてきてくれて、ありがと」





恥ずかしくて、目を見て言えなかった言葉。


北斗は鼻で少し笑うと、「どういたしまして」とさらに強く俺を抱き寄せ、首筋にキスをした。




「素直な大我、可愛い」





いつもは素直じゃなくて悪かったな!と睨むつもりで振り返ると、不意に唇を塞がれた。




「ずっと可愛いよ、」




「っは、なん、急にっ…」




「もうさ、今日、妊娠させるかも」






そう言ってニヤッと笑った北斗に、男同士で妊娠なんて出来るはずないのに、不覚にもドキッとして、下腹部がうずいた。







continue…

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