第3者side
リリィだった
照れくさそうに首の裏を撫でた
少女達は互いに顔を見合わせると口元をニヤリと歪めた
反対の意見は出なかった。
誰1人「待ってくれ」と発言しない
改めてクラウスは言葉を投げかける
少女達は頷いてクラウスに強い視線を返した
1週間後、『灯』のメンバーは陽炎パレスを発った
入国は、二つのグループに分かれた
クラウスと数名の少女は芸術家として就労ビザを取得し、リリィ含むほかの少女たちは金持ちの娘が演劇を見に来た設定で観光ビザを取得する
パスポートは当然、偽造したものだ
入国審査場では、厳しく追及された
滞在理由と宿泊先を詳細に尋ねられる
相手は二人
入国管理局の職員が質問をぶつけ、後方では軍人が目を光らせている
工作員対策だろう
手荷物も全て確認された
事前に用意していた嘘を頭に叩き込まなければ、即座に逮捕されていたに違いない
エンディ研究所はガルガド帝国の首都近郊に建てられていた
ガルガドの首都は、さすがに世界一の都市か、高速建築物で埋め尽くされていた
ディン共和国最大のビルは、国会議事堂を兼ね備える八回建ての建物
それを超える建物が無数に並ぶ
帝国特有の様式なのか、どれも尖塔
空を衝くような巨大な黒い塔が並ぶさまは不気味でもあり圧巻だった
中世の時代から首都として栄えてきた。
うみとやまにかこまれているため、侵略者から守りやすい土地である
尖塔は限りある土地を有効活用したゆえの文化だろう
1000年以上、暴力によって栄華を極めている街
エンディン研究所は、その針山のような町を見下ろす位置に建てられている
崖の上
よく言えば目立つ
悪く言えば潜入ルートは限られている
それが『灯』の忍び込む建物だった
作戦会議は事前に行われている
クラウスは少女たちに告げる
.
手元に持っていた資料をモニカに見せる
そして歩き出す蒼銀髪の少女
そしてその少女にありえないことを言う淡藤髪の少女
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。