今日は3人でショッピングモールへお出かけ。
『これ可愛い、あ、これも!』
照「俺はこっちのがえぇなぁ」
特に何も目的もなく来たけれど、目に映るのは璃子の為の洋服やおもちゃばかり。
しかし、当の本人は抱っこ紐の中でぐっすり。
照「重くない?変わろっか」
『大丈夫。照史こそ璃子の荷物たくさん持ってるんだから』
オムツに、おしりふきに、ミルクに水筒、哺乳瓶、授乳ケープに万が一の着替え…お出かけひとつにも大荷物。
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照「あ、これ、雑誌で見たやつやわ」
買い物中に照史が見つけたのは、ブランド物の帽子で、彼の趣味どストライク。目がキラキラしている。
『被ってみたら?』
照「ええの?ちょっと行ってくるわ!」
雑誌のワンショットが印象に残っているものなら、きっと照史が欲しいものなのだろう。
でも何故かいつも遠慮がちで、言葉は遠回し。
『パパ帽子似合うねー、璃子』
璃子「あぇー」
『帽子買っちゃえばいいのにねー?』
お目覚めでご機嫌の璃子に語りかけながら、試着してワクワクしている照史に声を掛ける。
その後すぐに「ちょっと買ってくる」なんて、急ぎ足だった照史の姿に思わず吹き出してしまった。
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照「あなたは、ほしい服とかは?」
帽子を買って、早速被り直した照史がわたしに聞いてくる。
『わたし?…んー、今のトレンドとかもよく分からないし、これといって思いつかないかな、』
璃子が生まれて、彼女中心の生活になり、
日々子育てに追われる中で、自分のことは二の次、三の次になっていた。
照史の隣を歩く身としては
清潔感だけは守っているけど…
自分が働かず、家計を管理する身となっては、自分にかけるお金もシビアになっている。
『わたしのことはいいよ、ほら、次見に行こ?』
照「え?ちょ、」
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それから数日して、
照史が両手に紙袋を提げて帰ってきた。
照「あなた、ちょっと見てー?」
照史にそう呼ばれ、料理をしていた手を止めて、リビングに荷物を下ろす照史のそばに向かった。
紙袋の1つは、わたしの独身時代からの行きつけのショップのショッパーだった。
『どうしたの、これ』
照「もー、女もんの店に入るん、めっちゃ緊張したわ。神ちゃん道連れにしたけどな。笑」
照史が紙袋を開くと、わたし好みのワンピースや、動きやすそうで、でもオシャレなシャツやスカート、パンツが入っていた。
照「いつも璃子んこと最優先にしとるけど、あなたも、もっとわがままでええと思うねん」
『そんな事ないよ、十分甘えさせてもらってる』
照「全然やで?…やからね、俺セレクトやけど、ちょっとしたプレゼント、かな?」
ほら着てみて!って
背中を押され、クローゼットに強制連行。
どれも、今のわたしにピッタリサイズで…
『照史、どうしてこんなサイズ分かってるの』
照「そんなん、あなたのこと一番愛しとるから、すーぐわかんねん」
そう言うと、いたずらに笑う。
それが何より嬉しくて、思わずぎゅっと照史に抱きついた。
『ありがとうっ』
照「いーえー、今度はそれ着て出掛けような?」
変わり映えしなかったわたしのクローゼットの中が、少しだけ鮮やかに、明るくなった気がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。