第2話

再開
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2019/03/02 04:27
西崎 春斗
橘さん…
ずっと好きでした!俺と付き合ってください!!
橘 菜乃花
ごめんなさい
まだ…そういう気にはなれなくて
西崎 春斗
まだ…引きずってるんですか
その、中学時代に好きだったっていう
橘 菜乃花
うん…
だから、ごめんなさい
西崎 春斗
それなら仕方ないですよね
あはは、困らせちゃってすみません
橘 菜乃花
ううん!そんなことは…
西崎 春斗
じゃあ
橘 菜乃花
あっ
橘 菜乃花
(また、やってしまった。
もうこれで、何回目だろう。
澄人くんがいなくなってもう5年。
高3の春だというのに。
西崎さんの言った通り、私はまだ澄人くんを忘れられないでいる。)
菜乃花がそんなことを考えならがら、ボーッと歩いていると、いつの間にか教室についていた。
西野 夏樹
菜乃花…。
聞いたよ、まだ忘れられないの?
橘 菜乃花
うん…。
どうしようね。
私、この先誰のことも、好きになれないのかな。
西野 夏樹
とりあえず、付き合ってみるっていうのは出来ないの?
橘 菜乃花
それは、なんだか失礼なような気がして。
西野 夏樹
菜乃花は優しすぎ。
たまには自分の事を第一に考えないと。
橘 菜乃花
うん…。
西野 夏樹
まあ、もう授業始まるし、とりあえず美術室行こ?
橘 菜乃花
ごめん、ちょっと頭痛いから保健室行こうかな。
西野 夏樹
え…だいじょうぶ?
送ろうか?
橘 菜乃花
平気へいき!
大丈夫だよ。
西野 夏樹
そ?
じゃあ、お大事にね。
橘 菜乃花
ありがとう。
そうして保健室に行くと、先生はいなくて、代わりに一人の男の子がいた。
橘 菜乃花
(先生、いないのか。
誰だろう。
見たことないけど…。
あれ、でも、なんか……。
いや、でも、まさか。)
男の子の髪が、風に揺れた。
橘 菜乃花
(懐かしい、この匂い。
間違いない。)
橘 菜乃花
あっ、あの!
雨宮 澄人
…え?
橘 菜乃花
(やっぱり!)
橘 菜乃花
澄人くん、覚えてる?
雨宮 澄人
え、な、菜乃花ちゃん?!
橘 菜乃花
アハハッ、嬉しい!
覚えててくれたんだね。
雨宮 澄人
なんで…ここに。
橘 菜乃花
それは、こっちの台詞だよ…。
橘 菜乃花
(あれ…?
おかしいな、何でだろ…
悲しいわけじゃないのに。
やだよ、こんな、カッコ悪い。)
菜乃花の頬に、一筋の滴が伝った。
それは、どんどん溢れてきて、止まらなくなった。
橘 菜乃花
アハッ、ごめんね。
何でかな。
雨宮 澄人
菜乃花ちゃん…ごめん。
俺、もう、行くね。
橘 菜乃花
えっ?
ま、待って!
まだ話したいこと、いっぱいあるのに!
雨宮 澄人
ごめん。
橘 菜乃花
そんなっ!
やっと、会えたんだよ?
澄人は立ち止まった。
しかし、すぐに、その場をあとにした。
橘 菜乃花
(どうして…)
涙は、悲しみの涙へ変わっていった。
菜乃花は、声を抑えられずに、泣いた。
ただ、ただ、泣き続けた。

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