第3話

分からない
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2019/03/02 04:41
その日の夜。
菜乃花は夏樹に電話を掛けた。

澄人に再開したこと。
澄人の態度が、素っ気なかったこと。
全て話した。
西野 夏樹
それは…何でだろうね。
橘 菜乃花
……。
西野 夏樹
でも、少なくとも、菜乃花を嫌いになったとかではないと思うよ!
いや、絶対ないよ!
橘 菜乃花
でも、だったらどうして…。
西野 夏樹
それは、驚いて、何も喋れなくなっちゃったとか。
橘 菜乃花
ごめん、ごめんって、何度も言われたの。
西野 夏樹
もしかしたら、何か秘密があるのかも。
何か、どうしても、菜乃花と一緒にいられない事情が。
橘 菜乃花
…秘密?
西野 夏樹
な、な~んてね!
取り敢えず、気にする必要は無いんじゃないかな?
また明日、話しかけてみようよ!
橘 菜乃花
夏樹…。
そうだね!
西野 夏樹
うん!
橘 菜乃花
ありがとう、おかげで元気出たよ。
西野 夏樹
良かった!
じゃあ、またね!
橘 菜乃花
うん、また明日。
電話を切った菜乃花だが、その表情は曇ったままだ。
橘 菜乃花
(元気出た、なんて言ったけど。
そんなの分けない。
分からない。
分からないよ。
どうして…。)
次の日、菜乃花は廊下で、澄人を見つけた。
橘 菜乃花
(あっ、でも、また逃げられちゃうかな。
でもっ!!)
橘 菜乃花
すっ、澄人くんっ!!
雨宮 澄人
……。
澄人は、立ち止まり、けれど何も言わずに、走り去っていった。
橘 菜乃花
(やっぱり…。)
菜乃花は、涙を隠すように下を向いて、教室へと向かっていった。

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