第30話

紛失物-13
428
2021/03/11 09:01
堂本side

トレーニング室で最後のトレーニングをしているとめぐみがやってきた

堂本「めぐみ...」

忍野「ねぇ、ちょっと見てて?」


そう言うとめぐみは制服のまま腕立てを始めた

最初とは違ってしっかり、

それにリズム良く10回

堂本「出来るようになったね」

忍野「これがいっぱいいっぱい...」

堂本「腕立ての話じゃない、

怖い顔が出来るようになった。

もう大丈夫、一人で立ち向かえる」

忍野「真矢が助けてくれたから...」

堂本「めぐみも助けてくれたのね、
私のこと

...庇ってくれたんでしょ?

10円玉に私の指紋がついてなかった。すり替えてくれたのね...

そんなことしたって風間教官には敵わないのに...



...もう会えないね」


ここを辞めるのも、

彼女と離れるのも哀しい選択だった

堂本「めぐみは辞めちゃダメだよ!」

忍野「真矢...」


私はいつも付けていた腕時計をめぐみの腕に付けてあげた

堂本「トレーニング、続けるのよ?」


めぐみの手を握って心の中で思いを伝えた

めぐみが幼い頃に警察官にしてもらったように


‶もう大丈夫″って...


忍野「真矢...」

堂本「…もう一度聞きたい」


そう言うとめぐみは頷いてポケットからハーモニカを出し音を奏でた

演奏を聞いている間、涙が止まらなかった。



ーーーーーーーーーー



演奏を聞いてめぐみと別れ、
私は風間教官のところに足を運んだ

堂本「堂本真矢です」

風間「入れ」

堂本「失礼します」


中に入って敬礼をする

教官は何も言わずに私に退校届を渡した

堂本「失礼しました」

敬礼をして部屋を後にしようとした時、教官が声を掛けた

風間「しっかり想いを伝えたか」

教官は私が描いた坂根さんの絵を裏返した

気付いたんだ...


一度は描いたけれど消したハーモニカを吹くめぐみと


杣くんをみているのあなたの姿と

芹沢くんをみている花恋の姿



私の、一番好きな三人の瞬間


2人は自分の気持ちに気づいているのか知らないけど


風間教官は鉛筆で薄く塗りつぶし、絵を浮かび上がらせていた

堂本「いいえ」

風間「サインして持ってこい」

堂本「失礼しました」


入校から3ヶ月、私は警察学校を退校した

プリ小説オーディオドラマ