私は、すぐに答えたよ。
「お父さん、お母さん、碧佳、エイちゃん、そら、みっくん、りっくん、クラスメイト、みんなと普通に楽しく過ごしたい。」
って。
そうしたら、お父さんは、
「そっか、偉いな、あなたは」
って言って、私をまた抱きしめてくれたの。
でも、今みんなはこう思ってるよね。
「なんで言ってくれなかったんだよ。」
って。
それは…本当にごめん。
言えなかったんだ…。
みんなが悲しい顔をするのが見たくなかった。
私を元気づけようと、必死になる姿が見たくなかったの。
私は、普通の、いつも通りのみんなが見てたかったの。
小心者でごめん。
臆病者で本当にごめん。
許してくれるかわからないけど、許してくれたら嬉しいな。
話、戻すね。
あ、みんな気づいてたかな?
私が、それからみんなとたくさん写真を撮るようにしてたの。
理由はね、みんなとの思い出を増やしたかったの。
楽しかった。
みんなと普通に楽しく過ごせて嬉しかった。
「もしかしたら、病気なんて治るんじゃないか」
なんて、思ったりもしてた。
けど、病魔はゆっくりと、ゆっくりと、
私を追い詰めていってたの_____
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。