前と同じように薄暗い廊下を進むと
3枚の扉を開ける度に匂いがきつくなる。
前よりも少し匂いが濃くなったような気がする。
すぐにお母さんは去り、何も見えない柵の向こうを凝視する。
呼びかけても何の反応もない。
人骨が無造作に転がる薄暗い地下室。
お化けでも出てきそうで怖くて、早く返事してほしかった。
柵の端にあるドアに近づいて、外側から掛けられる古い構造の鍵を外す。
...
シーンと静まり返って何のリアクションもない。
少し怖いけど、それ以上にユンギくんが心配でドアを開けた。
突然暗闇から伸びてきた手が
私の肩を掴んで激しく壁に押し付ける。
目の前にいて私を壁に押し付けているのはユンギくんだけど
その目は赤く爛々としていて、思わず縮こまってしまった。
まるで殺気だったようにも見えるけどなんだか苦しそうにも見える。
近かったユンギくんがさらに近づいて
私の首筋に顔を埋めて深く息を吸い込む。
ゴクリと喉が鳴る音が聞こえて
彼が今、私を食べ物として認識していることに気づいた。
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顔をあげたユンギくんと至近距離で目が合う。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。