放課後になり、みんなが帰っていく中
リュックを背負って帰ろうとするユンギくんを呼び止めたのは、
さっき助けてあげたからか、初めて素直に教室に残る。
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人がいなくなるのを待って尋ねると
無表情なまま答える。
もう乾いてしまったけど赤く染まったシャツの袖を差し出す。
それを見て少しだけ息を吸い込んだのは
見られたらまずいものだから?
するとリュックを置いて、中身から袋に入った何かを取り出した。
鈍い音を立てて机の上に置かれたそれは血まみれで、血色のない肌のような色をしたものが入っている。
淡々とした口調で袋の結び目を解いて
その中身をひとつ取り出して口に咥える。
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嫌な音をたてながら引き裂くそれは
明らかに人の体の一部で
目の前でそれをむしゃむしゃと食べている。
言葉も出ない私を見る瞳は赤く光って、
蛇に睨まれた蛙のように体が硬直する。
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私に見せるだけ見せてリュックに仕舞うと
そのまま背負って教室を後にする。
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...
もしかしてユンギくんは誰かを殺してしまったのかとか、その凶器を隠してるとか
そんなことまで勝手に妄想して怯えてたけど
現実は、そんな私の妄想の斜め上をいっていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!