第3話

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2019/03/16 13:50
『○○さん!!』

『今日ご飯いこー?』

『好きだよ、○○さん』

『○○さーん!!』

あれから一週間。毎日こんな調子で、スニョンさんが傍にいないときでも、彼の声が聞こえそうなくらい話しかけられている。いい人かも…と思ったのも束の間、こんなに言われなくても分かってるよ、とモテる女のような台詞が頭に浮かんでしまう。

「最近スニョン先輩と仲いいね。なんか意外。」

2期上のマリさんが言う。彼女はとても気さくで綺麗で、会社の皆から好かれている。誰にでも分け隔てなく接する姿を私も見習いたいほどだ。スニョンさんとは歳がふたつ離れているが息の合ったパートナー、そんな印象があった。だから、彼の気持ちを知らないことに少し驚いた。

「そう…見えますか?スニョンさん、最近、すごく構ってくれるというか…世話焼いてくれると言うか…嬉しいことには嬉しいですけど…」

言い終わらないうちに後ろから声が降ってくる。

『へー、嬉しいんだ、○○さん。』

「あ、スニョン先輩。お疲れ様です」

「…!!」

『お疲れー、マリさん』

「…嬉しいけどって言ったんです。」

『でも、嬉しいんでしょ?構われるの。』

「それは…!!」

ニヤニヤしながらからかわれてる。恥ずかしさと少しの嬉しさとグチャグチャになった気持ちの整理がつかなくて。逃げ出したくなった時、

「先輩、からかいすぎですよー。勘弁してやってください。そうだ、先輩に聞きたいことがあったんですよ。」

マリさんがそっと助け舟を出してくれた。有難くそれに乗り、そそくさとその場から逃げる。遠くからスニョンさんの引き止める声が聞こえた気がした。

朝から体力削られるようだった。嬉しくないって否定することも出来なかったな。好きになるようなタイプじゃないはずなのに、気になって仕方がない自分がいる。嘘、嘘。先輩として好きなだけだから。

午前中ずっと彼のことを考えていたようだった。お昼食べてリセットしよう。そう、それがいいわ。だけど私のお昼はスニョンさんに壊された。

『○○さーん。お疲れ』

「あ、お疲れ様です。」

『え、それだけ?もっと嫌味言われるかと思った。』

「嫌味なんて言ったことありましたっけ?いつもスニョンさんには尊敬の意でいっぱいですよ?」

『そんな死んだ目で言われても。』

けたけたと笑う。そっちこそなんか言うと思ったのに。調子狂う。

「とにかく、朝のことは忘れてください。少し口が滑りました。」

『うん、そうする。今度言う時はちゃんと俺に言ってね。』

「…もう言いません!」

慌ただしい昼休憩はあっという間に過ぎて、もう終わってしまった。

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