「ありがとう」
「……え?」
「だから……ありがとう。
僕のそばに、ずっといてくれて…。
小さい時のことだけど……ちゃんと覚えてるし……、
少しは、感謝も……してる…」
「三郎……、
お前、そんなこと…」
「ああぁぁぁ!
今の気にするな!
間違えた!」
「…あははははっ、ありがとな。
でも俺は別に、感謝されることはしてねぇよ…
三郎のことが心配で、ずっとそばにいただけだか…」
「だから僕は感謝なんかしてない!
嘘だから!
忘れろ!」
「嘘ってなあ…。
夢野幻太郎みたいなこと言うなよ。
…でも、俺は嘘でもぜってー忘れねぇからな?」
「…!
ほんとに、、やめろって…」
「また照れてんのか?
お前、ほんとかわいいなぁー」
「照れてない!
っていうかここ僕の部屋だから!
出てけ!
早く!」
「あーはいはい。
ったく、心配して来てやったのに…。
出てく出てく」
そのとき二郎の携帯から着信音が鳴った。
「ん…?
あ、にいちゃんから、今日は帰るのが遅くなるから夕飯先に食べとけだって。」
「ええ!?
ってことは…、僕は二郎が作ったご飯を食べなければいけないのか…、はぁ」
「おいさぶろぉ、俺も一応調理実習やってるからな。
腕には自信があるんだよ」
「調理実習はみんなやってるだろ…」
「なんか食べたいもんあるか?
なんでも作ってやんよ」
「…ええ、お前が作ったものなんかなにも食べたくないけど…
まあ強いていうなら、…カレー」
「おっし、わかった。
食料買ってくるから待っとけ!
……あ、それとも…久しぶりに、一緒に買い物行くか?」
「………うん、二郎みたいな馬鹿じゃ、何買ってくるかわかんないからな。
しょうがないからついていってあげるよ」
「素直じゃないなぁ、さぶろーは。
…よし、じゃあ着替えたら部屋から出てこいよ」
「わかってる。
うるさい。
早く出てけ。」
「はいはい」
二郎が出ていき、ドアが閉まる。
あぁ、2人で夕食を食べなきゃいけないなんて最悪だ。
それに、買い出しも面倒だ。
……でも、久しぶりに一緒に行く買い物。
少しだけ、楽しみだったりするんだよな。
____________End____________
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。