第800話

第748話 優しい父と母と妹がいる
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2023/01/28 11:58
りょうや「てか父さん...部屋のドアどうすんの?」
りょう「んなもん業者に電話して直すに決まってるだろ」
りょうや『なら最初から壊さない方が良かったんじゃね...?』
りょうやはぐしっ、と目元を袖口で脱ぐって、父親を見上げる
父の胸元は酷く濡れていて、服の色が濃くなっていた
りょうや『我慢してたんだけどな』
そんなに泣いてたんだ、気が付かなかった
ハッとなったときには父親に頭を撫でられて、抱きしめられていたときだったし
りょうや『.......今思うと相当はずい』
一生の不覚がまた増えたよ、それじゃあ一生じゃないのにね
りょう「今度から黙ってないで言いなね、そーいう場合は怒らないから...」
伸ばされた手はまたりょうやの頭に乗せられた
りょうや「分かったよ...」
ポソリと呟いたりょうやの言葉によし、とりょうは頭を一撫でした
りょうやはりょうと一緒に壊れたドアを跨いで部屋から出た
泣きすぎて疲れたし、お腹空いたからだ
下に着くと、いずと鉢合わせた
何故か知らないけど、カラーバットを肩に担いでいる
りょうや「....何?野球選手になるの今から」
りょうやが苦笑して言うと、いずはキッとりょうやを睨み付けた
いず「......お兄ちゃん」
りょうや「な、何でしょういずさん?」
するといずは担いでいたカラーバットを素早くりょうやの鼻先に先端を突き付けると、低い声でこう言った
いず「次あんなことしたら私、本気で怒る....守ることばかり考えないことね....私も守れるんだから」
それだけ言うとフンッ、と鼻を鳴らしていずは入れ替わりで二階に上がっていった
ツラツラと伝えられた内容に驚く
りょうや「........で、デレた?」
りょう「いずもブラコンだな、相当の」
りょうはりょうやの隣で笑っていた
りょう「また後でちゃんと謝っとけよ?てつやにもさ、...てつやまで泣いてたんだから」
りょうや「うっ......分かってるよ」
りょう「......行ってきな」
背中をポンッ、と押され、りょうやはてつやの元に足を向かわせる
リビングにいる、....母さんは
りょうや「母さん....」
声をかけると、母は辛そうな表情を浮かべて、心配そうにりょうやを見た
てつや「りょうや.....」
りょうや「...か、母さんあのさ...黙ってて、ごめん.....心配かけたくなかった、ごめん....ホントは、めっちゃ辛かったよ」
てつや「うん....」
りょうや「母さん、その....」
りょうやが言う前に、てつやは腕を広げた
てつや「おいでりょうや」
優しく微笑んで、てつやはりょうやを招く
りょうやはのそのそと動いて、今度はてつやの胸元に顔を埋めた
りょうや「ごめん母さん....」
てつや「うん、りょうやが無事で良かった.....いずを守ってくれて、ありがとう.....」
りょうや「.......うん」
優しい言葉がまた体と心に沁みていく
父親の優しい視線も背中に受けて、兄のために強くなろうとする妹の健気さに嬉しくなって、母親の温もりを感じて...りょうやはまた一つの雫を瞳から溢した



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