話ってなんだろう。
僕はそのまま生徒指導室へ向かった。
「失礼します。」
あれ?...
「お兄ちゃん、生徒指導の先生は?」
「あの人、おじいちゃん先生でしょう?」
あ、それ言っちゃうんだ。
でもそんな正直なお兄ちゃんも好き。
「だから、急に体調崩してお休みになられたんだよ。」
言葉使い丁寧だなあ。
「じゃあ本題に移るぞ。」
「うん。」
「まず一つ、母さんから同居の許しがもらえた。」
「それってお兄ちゃんと!?」
「うん。」
お兄ちゃんが優しい顔でうなずく。
嬉し過ぎて飛んでしまいそうだ。
「お兄ちゃんの家で!?」
「うん、兄ちゃんの家で。」
心臓が破裂しそう。
胸の高鳴りが止まらない。
「じゃあこれから、
お兄ちゃんと一緒だね。」
「そうだね。」
「あともう一つ、」
「兄ちゃん、結婚するかもしれないんだ。」
え?
「向こうの娘さんが兄ちゃんを気に入ったらしくて...」
兄ちゃんが結婚?...
あまりに衝撃的過ぎて、後のお兄ちゃんの話が入ってこない。
人に散々寂しい思いさせといて
帰ってきたら結婚だなんて...
「でも...」
「意味わかんない...
意味わかんないよ‼
人に散々寂しい思いさせといて、帰ってきたら結婚だなんて!!」
「涼...話聞い...」
「聞けるわけないじゃん!」
僕は生徒指導室を出ようとした。
「涼!」
お兄ちゃんが僕の名前を呼ぶ。
お兄ちゃんが手に持っているものは
ハンカチだった...
そうか...
僕泣いてたんだ...
でも、受け取らない。
「お兄ちゃんなんか!」
「大嫌い!」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!