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第3話

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2021/04/06 06:15
「そういえばおまえ、他の奴らの間で胸がないと話題になっていたぞ」

 学校が終わって宿儺の家に遊びに来ていたとき、突然宿儺はそう言った。

 驚いて宿儺を見ると、彼は自分の椅子に座って身体をわたしの方へ向けていた。片膝を立ててその上に肘をつき、にやにや笑いながらわたしを見下ろしている。

「そ、そんなことないよ! ちゃんと、ある……」

「ふうん?」

 疑うような返事をしてから、宿儺はわたしの顔から視線を下げた。しかし、すぐに鼻で笑った。

「あるようには見えんが」

 ……なんてデリカシーのかけらもない人間なんだろう。

 素直で優しい性格をした悠仁の双子であることが信じられない。

「宿儺って、ほんと最低」

 言いながら、手の届く距離にあった宿儺の枕を彼の顔面に向かって投げつける。だが、難なく片手でキャッチされてしまった。

「はあ、勝手に言っていろ。……だがまあ、実際に見てみないとわからんが」

 そう言いながら宿儺は、にやりと笑った。

「……じゃあ、見てみる?」

 上目遣いで宿儺に問いかけた。最初は、宿儺を困らせるためだけのつもりだった。

 だが宿儺は、少し驚いたような表情を見せただけで、すぐに平静に戻る。

「……本気か?」

 強がりはやめろ、とでも言いたげな様子で宿儺は、ふう、と呆れたように息を吐いた。

 そんな宿儺の態度に、元来負けず嫌いの性分であるわたしは、どこかカチンときてしまった。だから、ムキになって。

「……ほんき」

「なに?」

 それに何より、密かに抱いていた宿儺に対しての淡い恋心による、見られたい、触れられたいという気持ちもあった。というより、こちらが本音だったのかもしれない。

 わたしは顔をあげてから、もう一度同じ言葉を繰り返した。

「ホンキだよ」

 それから先のことは、いまでもはっきりと覚えている。

 触れてくる大きな手、耳をねぶる熱い舌、わたしを見据える獣のような瞳──。

 そうしてわたしたちは、身体の関係を持つようになった。宿儺の家やわたしの家、さらには学校でも何度もヤったことがある。

 でも、キスだけはしたことがない。わたしからしたこともなければ、宿儺からすることもなかった。

 まあ、当然と言えば当然なのかもしれない。

 セックスは性欲を満たすためという理由があるが、キスをするのには理由がなかった。

 恋仲でもないわたしたちが、愛情表現であるキスをするのは何か違うということを、お互いに理解していただけだったのだ。

 そんな中学2年生の頃の自分を思い出し、思わず自嘲気味に笑った。

 ……ほんと、バカだなあ。