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第4話

1,052
2021/04/06 03:00
 シャワーを済ませて脱衣所で着替え、廊下に出る。

 宿儺の部屋に戻ろうと思ったが、台所から何やらいい匂いがしてきたため、行き先を変更した。

 予想通り宿儺は、台所に立って朝食を作っていた。そんな宿儺の隣に立ってみる。こちらに一目もくれない宿儺に口をへの字に曲げた。

 真剣な顔をしたまま料理をし続けている宿儺の横顔を見つめながら、からかうようにして口を開いた。

「宿儺、お母さんみたい」

「しばくぞ」

「あ、やっとこっち見た」

 すると宿儺は眉を歪め、不機嫌そうにわたしを睨んだ。

「うわー、怖い怖い」

 サッと宿儺から離れて距離をとる。本当は怖くもなんともない。10年以上一緒にいると、この目つきにも慣れるものだ。

 座っていろ、と言われ、ダイニングテーブルの椅子に腰掛ける。

 足をぶらぶらさせながら待っていると、宿儺が朝食を持ってきてくれた。

「食え」

「ありがとう」

 目の前にトーストとスープが置かれる。

 宿儺の料理はとても美味しい。あの見た目からは想像がつかないが、彼は結構家庭的なところがある。

「いただきます」

 そう言ってトーストを頬張る。でも、あまり味を感じない。実を言うとここ最近、食欲が湧かないのだ。せっかく作ってくれた宿儺に申し訳なかった。

「……具合でも悪いのか」

「えっ?」

 宿儺にしては珍しい、他人への気遣いの言葉。驚いて顔をあげると、宿儺はじっとわたしを見つめていた。

「大丈夫か?」

 今度はわたしの顔を覗き込むようにしてそう言った。口に出されたそんな労りの言葉が、わたしをさらに苦しめた。

 鼻の奥がツンとして、目頭が熱くなり、泣きたくなる。

「……うん。平気」

 なんとか平静を装ってにっこりと微笑むと、宿儺は「ならいいが」とひとことつぶやいてトーストにかぶりついた。

 再びトーストを頬張った。でもやっぱり、味があまり感じない。

 実を言うとここ最近、宿儺との関係を続けることが苦痛になってきた。