侑 side
- 俺はあなたのマネージャーさんに連れられて
公園から少し離れた所までやってきた
マネ:私はあなたのマネージャーを任されている大森と言います
侑:宮侑です。よろしくお願いします
マネ:さっきも言ったけどあなたのマネージャーを務める上で社長からあなたの過去は全て聞いてるわ
- " だから貴方の事も全て知っている "
大森さんはそう言った
マネ:あなたは稲荷崎高校のバレー部,そう,貴方達のマネージャーをしていた
侑:………!
マネ:しかし去年の11月,転校してきて新しく入った後輩のマネージャーに" 春高出場したければ悪女になって部員から嫌われろ "と脅された
- 大森さんはあなたの過去を話し始めた
マネ:お人好しのあなたは皆を思って悪女を偽る。けど部員はたった一人の後輩除いて誰も信じてくれず酷い虐めにあっていた
侑:ッ………
マネ:限界が来たあなたは自ら川に身を投げ自殺未遂をはかる。その際に頭を強打し記憶を失い,辛い過去を受け入れる事が出来ず未だに記憶が戻らない
- " これであっているかしら? "と大森さんは言った
俺は小さく頷いた
マネ:当時あなたには深く関わる人が" 二人 "いた
侑:え?
マネ:一人は従兄弟の" 角名倫太郎 "。生まれた時から知っていて当時は角名くんの家に居座っていた
侑:………!
マネ:そしてもう一人が______
『 あなたの" 元彼 "。宮侑。』
マネ:貴方達は別れているから元彼という解釈で良いのよね?
侑:ッ………はい………
マネ:理由はどうであれ,貴方達があなたにしてきた事は酷く醜いこと
侑:ッ………!!
- そうや______
俺は自分の彼女の事も信じずに
彼女の言葉だけを鵜呑みにして
皆に乗っかって彼女を虐めとった
マネ:謝りたかったのかもしれない。その気持ちはわかるわ。でも_____
『 あなたの記憶をこれ以上引き出さないでくれる? 』
マネ:彼女が記憶を取り戻す事を私と社長は反対している
侑:え………?
マネ:彼女は" 死にたい "という気持ちで川に身を投げて" 自殺未遂 "をしたの
侑:ッ………
マネ:もしあなたが記憶を取り戻してあの日の光景や辛い日々を全て思い出したら____
『 また死のうとするかもしれない。』
- あなたは死のうとして川に身を投げた
でもその結果記憶を失っとるから
あなたの自殺未遂はそこで止まっとる
でも思い出したら____?
また死のうとするかもしれん
でも______
マネ:あなたは着実に貴方の事や記憶を気に掛けている
侑:え?
マネ:思い出したくないという気持ちがない限り,あなたが記憶を取り戻すのは時間の問題かもしれない
侑:………!
マネ:だからこれ以上あなたの記憶を引き出さないで欲しいの
侑:………
マネ:もうこれ以上____深くあなたと関わらないで
侑:それは出来ません
マネ:え………?
侑:確かにあなたの辛い過去を作ったのは間違いなく俺たちです。死のうとしていたあなたが記憶を取り戻したことによってまた死のうとするのか,それは考えただけでほんまに怖いです
マネ:………なら………
侑:でも,辛い過去だけやない
マネ:………!
侑:あなたの記憶の中には楽しい記憶やってたくさん詰まっとる
- 一緒に過ごしてきた思い出
全て忘れて欲しくなんて無い
侑:俺はあなたを支えます。もし死のうとしたら俺が全力で止めます。絶対に死なせない
マネ:………!
侑:謝ったところで許されるとは思ってないです。でもだからといってこのままわけもわからんままあなたには過ごして欲しくない
マネ:え………?
侑:俺は記憶を取り戻したあなたと向き合いたい。記憶を取り戻したあなたにもう一度しっかりと謝りたい。記憶を取り戻したあなたにもう一度____
『 " 好きや "って伝えたいんです。』
侑:だから俺はあなたに近付くことも記憶を取り戻そうとする事も辞めません
マネ:………!
侑:いきなり思い出す事は負担になるかもしれへんからゆっくり関わっていきながら記憶を取り戻させてあげたいんです
- そうする事が____今あなたにしてやれる
最大の俺の報いやと思っとるから
マネ:………貴方の意見はわかったわ
侑:………!
マネ:でも……邪魔はしないけど賛成も出来ない
侑:え………?
マネ:貴方はそこそこ有名かもしれないけどあなたはもうトップモデルの道を進んでいるの
- " もう住む世界が違うのよ "
そんなのわかっとる
関われば関わるほど
それがバレるリスクは高まる
でも______
それでも俺は絶対に辞められへん
もう一度______二人で笑いあう為に。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。