- " サングラスは絶対に着けて移動すること "
" 終わったら公園まで戻ってくること "
" 絶対に誰にもバレないこと "
この3つを大森さんと約束して
あたしは宮くんと人混みへ向かった
あなた:( サングラスかけると暗くてよく見えないな…… )
- ただでさえ暗いのにサングラス
視界はとても暗かった
侑:………ん
あなた:え………?
- 差し出されたのは宮くんの手
侑:サングラスで視界暗いやろ?
あなた:え………
侑:ただでさえ人混みすごいしはぐれたらあかんやろ
- " せやから掴んどき "
宮くんはそう言いながら手を差し伸べていた
あたしは宮くんの手をそっと握った
侑:浴衣で来てくれたんやな
あなた:あ……うん。京都での撮影が浴衣だったからそのまま来てみたんだ
侑:そっか………
『 めちゃくちゃ似合っとる。』
- そう言う宮くんの顔は
サングラス越しでもわかるくらい
優しい表情をしていた
侑:何か食うか?
あなた:うーん………
侑:まだ食欲あらへん?
あなた:いや,怪我も治ったから前よりはだいぶ食べられる方にはなったと思うけど……
- " 怪我? "と宮くんは首を傾げた
そういえば言ってなかったっけ____
あなた:あたし,肋骨折れてたんだ
侑:………ッ!!
あなた:その痛みのせいで暫くは本当に何も食べられなかったの
- あたしがそう言うと宮くんは驚いた顔をしていた
そして____顔を顰めた
侑:………すまんかった………
あなた:え………?
- 宮くんは小さな声で何かを呟いたけど
人混みでその声は聞こえなかった
あなた:………あ,あれ食べたい
侑:え?
- すぐ近くにあったチョコバナナの屋台
ピンクや黄色など
カラフルなチョコがコーティングされていた
侑:何色がええの?
あなた:え?うーん………黄色にしようかな?
侑:黄色な。おっちゃん黄色の一つ
屋台の人:あいよ
- 宮くんはお金を払うと
黄色いチョコバナナを手に取った
侑:ん
あなた:え?
侑:?食いたかったんやろ?
- 宮くんは首を傾げながらあたしにそう言った
あなた:そ,そうだけどお金………
侑:要らんよ。今日来てくれたお礼や
あなた:え………?
侑:仕事終わってわざわざ来てくれたんやろ。せやからお礼
- " 受け取ってや "と宮くんは微笑むので
あたしは渋々チョコバナナを受け取った
あなた:あ,ありがとう………
侑:おん。ほな行こか
- 侑くんはまたあたしの手を取り歩き出す
あたしはチョコバナナの棒を握りながら
斜め後ろから宮くんの後ろ姿を見ていた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。