- 夜の公園
あたしはブランコに座っていた
ブランコなんていつぶりだろう
そう思いながら____夜空を見上げた
侑:あなた!!!!
あなた:………!
- 息を切らした彼がやって来た
あなた:………走ってきたの………?
侑:当たり前やろ?そんな事よりもう体調大丈夫なん?
あなた:え………?
侑:入院しとったんやろ?もう仕事復帰しとるん?
あなた:あ,うん………もう仕事は復帰してるよ
侑:そか………よかった
- 彼は安心したように微笑んだ
その顔を見て____あたしは胸が痛んだ
侑:それで………話って………?
あなた:………
- あたしはブランコから立ち上がって彼の前に立った
あなた:突然呼び出してごめんなさい。どうしても話さなきゃいけないことがあったの
侑:………?話さなきゃいけないこと………?
『 あたしと会うのを,これで最後にしてほしいの。』
侑:………え………?
あなた:あたしは凛々華を追い掛けるモデル。病院に搬送されただけで新聞に載ってしまうくらいには有名になった
侑:お,おん………
あなた:そんなあたしが今こうして貴方と会っている間も誰かに見られるかもしれないというリスクを背負っている
侑:そ………それはそう………やけど………
あなた:もしスキャンダルにでもなったりしたら今までの努力が全て水の泡になる。あたしだけじゃない。社長やマネの努力も全て無くなってしまう
侑:………ッ
あなた:だから______
『 もう連絡もしてこないで。』
侑:………嫌や
あなた:ッ!
侑:折角此処まで近付くことができたのに諦めるなんて出来ひん!!
- " 俺はあなたの記憶を取り戻すんや "
彼は真剣な目でそう言った
あなた:あたし,仕事の邪魔になるなら記憶を取り戻せなくていい
侑:え………?
あなた:取り戻したことによって仕事に支障が出る感情が生まれるなら一生記憶なんて戻ってこなくていい!!!!
侑:ッ………!!
あなた:あたし______
『 もう記憶なんて取り戻したくないの。』
あなた:記憶の事を考えるのが辛い。それがもう仕事の支障になってしまっているの
侑:………ッ
あなた:あたしはこの努力を無駄にしたくない。みんなの期待に応えたい。だから______
『 もう二度と,あたしに関わらないでください。』
- あたしは立ち尽くす彼の横を通りその場を去った
そのまま公園の外で待っていた
大森さんの車に乗り込んだ
マネ:………本当に良かったのね………?
あなた:ッ………はい………
- 我慢していた涙が
ポロポロ溢れだした
あなた:記憶を取り戻したことによって死にたいとは思わなかった………でも______
『 あたしのせいであそこまで" 侑くん "を
追い詰めてしまっていた______。』
あなた:もうあたしに彼を愛する資格も彼に愛される資格もありません……ッ………
マネ:………
あなた:きっと侑くんはあたしと関わっている以上一生あの時の事を後悔し続ける
- そんなの嫌だった______
あなた:もう彼を縛りたくない……その為にはもう……縁を切るしか無かったんですッ………
- だから早く____あたしを忘れて
マネ:貴女が決めたことならもう何も言わないわ
あなた:…………!
マネ:………今は何も気にせず泣きなさい
あなた:〜ッ…………
- あたし達は
いつから道を間違えてしまったの______?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。