侑:そろそろ花火始まるから行こか
あなた:う,うん
- 花火がそろそろ始まるらしく
宮くんは花火を見る場所に移動した
でも何故か人混みを抜けて
人気の無いところまでやってきた
侑:此処なら人もおらんしゆっくり見れるやろ
あなた:此処は………神社?
- 連れてこられたのは神社の階段だった
宮くんの言う通り確かに此処には人が居ない
でもあたし______
侑:此処ならサングラス外しても大丈夫やろ
あなた:え………?
- 宮くんはそう言ってあたしのサングラスを外した
急に視界に色が着く
あたしは辺りを見渡した
やっぱりあたし______此処を知ってる
侑:ほれ,座り
あなた:え………?
- 宮くんはハンカチを広げて
あたしに座るよう促した
" あー,やっぱり靴擦れしとるわ "
" ほんまに無理だけはせんといてや "
あなた:ッ………
侑:あなたッ………!?
- また頭が痛むと同時に浮かんだ光景
やっぱりあたし,過去に此処に来たことがある
しかも____宮くんと
侑:平気か……?
あなた:……うん,平気。ちょっと疲れてるみたい
侑:仕事の後やもんな。無理言うてごめんな
- 宮くんもあたしの隣に腰を下ろした
侑:……どうしてもあなたと一緒に過ごしたかったんよ
あなた:え………?
侑:せやから来てくれてほんまに嬉しかった
- " 無理言うてるのはわかっとったけど
それでも来てくれてほんまにありがとう "
宮くんは優しくそう微笑んだ
あなた:………100%宮くんに誘われたからじゃないよ
侑:え………?
- 誘われただけなら絶対に行かなかった
バレるかもしれないリスクを背負ってまで
男の人と一緒になんて歩けない
______でも
宮くんに会いたいと思っている自分が確かにいた
パアンッ
パアンッ
あなた:………!
侑:………始まったな
- 記憶上これが初めて見る花火
空に広がる光る花畑
あなた:綺麗………
侑:………!
- あたしの頬は自然と緩んでいた
過去のあたしもこんな綺麗な花火を
誰かと見ていたのだろうか____?
侑:………ほんま,綺麗やな
- 宮くんがあたしの顔を見ながら
愛おしそうに微笑んでいた事に
あたしは花火に夢中で気付かなかった
あなた:……終わったね
侑:せやな
あなた:大森さん待ってるから……行かないと
- あたしは立ち上がってタオルを畳んだ
洗って返そう
そう思っていた時____宮くんに手を掴まれた
侑:_____あんな
あなた:………?
侑:俺______まだあなたに言うてへん事があんねん
- 言ってないこと____?
侑:記憶の無いあなたに言うても意味無いことくらいわかっとる
あなた:え………?
侑:でも………とにかく言わせて欲しいんや
『 ほんまにごめん。』
- 宮くんは泣きそうな顔であたしを見詰めながら
そう静かに謝った______。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!