辺りが暗くなってきた。
「ねぇ、怖いんだけど?」
「んなこと、言ってたら旅なんか出来ないぞ?」
わかってるわよ!
エマが持ってきてくれたご飯をクリスが調理してくれている。
「なんやかんやあんたって優しい。」
「ま、ちょっとめんどう見てやらねーと死にそうだからな。仮にもアイドル。死んだら困るだろ?」
「ねぇ、仮ってなによ!私はちゃんとアイドルよ!」
と、私が叫んだときだった。
ガサガサ。
なにかが近付いてきた。
「おっと、モンスターが出てきたぜ。今日の夕飯奪われねーように頑張れ。」
「私だけで戦えって!?」
「エマも手助けしてくれる。安心しろ。アリアの実力も気になるしな。」
横にはエマがいた。
「くらえぇ!モンスター!」
私は大きく息を吸い込んだ。
「おい、?アリア!?」
そして、マイクを振動させるその一心で。
「きめぇんだよ!ベタベタ触れんじゃねぇ!オタク共がぁぁぁ!!!」
日頃のイラつきを込めて叫んでやった。
「耳…あるか。俺の耳!!」
「ガァガァガァ!」
どうやらクリスにもエマにも被害があったようだ。
「ご、ごめんなさいね?」
「まぁ、いい。モンスターもうるさくて大逃走だ。ファンが聞いたら泣くぜ?」
「別に良いのよ。事実だから。さ、ごはん食べましょ。」
クリスの作るようなご飯は旅の中で食べれるとは思っていなかった。
それほど、美味しかった。
「アリアお疲れ様。とりあえず今日はこれで終わりだ。テントとかあるのか?」
「は?テント?」
「野宿だよ。」
そのことを考えていなかった!
「な、ない。」
「……はぁ。しゃあねぇ。このテント使いな。寝袋も貸してやるから。」
「クリスは?」
「俺はベテランだぜ?なにもなくなって寝床くらい作れるっての。」
そう、ニヤリと笑った。
寝袋はとても暖かく、今日1日を鮮明に思い出させてくれた。
「ありがと、クリス。」
「おうよ!また明日な!」
明日も頑張ろう。そう決意し、私は眠りについた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。