.
ひら、と手を挙げて被っていた帽子を外すジョンハン。
約12時間のフライトを共にするのは彼のようだ。
こんなに長時間飛行機に乗るのは初めてだったから、彼が隣で、なんとなく安心した。
最近はメンバーとも仲良くなり、よく話すようにはなった。
でも、1ヶ月じゃ相手のことを、ましてや13人のことを知ることは不可能。
ジョンハンさんはいつも僕を気にかけてくれた。
自ずと話す回数も増え、心を開きつつあった。
間もなくして飛行機が離陸。
三半規管の弱い僕はこの瞬間が1番苦手。
揺れが落ち着いた時、ジョンハンさんが荷物から小型のカメラを取り出す。
カメラをこちらに向けるヒョン。
弱く曖昧に掌を上げる。
会社から渡されたカメラらしい。
後でコンテンツとして使うとかなんとか。
ひひ、と上下の歯列を見せて笑っている。
僕と彼の座席の間にはサイドテーブルが付いていて、その端へとカメラをセットするヒョン。
機内は3列になっていて、両端に1人用の座席、真ん中は僕達が座る列で、テーブルを挟んで2席がくっついていた。
あまり大きな声で話せず、サイドテーブルに肘をついて、こちらに身体を傾けながら僕の耳元に口を近づけて話すジョンハンさん。
カメラの画面に映る彼の横顔がとても綺麗だった。
다음
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!