次の日の撮影に備え、就寝しないといけない時間になった。
サイドテーブルを挟んで隣に置かれたベッドで横になっている、ウォヌの声が聞こえた。
僕が応えるとパチンと真っ暗になる室内。
布と布が擦れる音と、ウォヌの咳払いが響いた。
暗闇で2人で話していると修学旅行を思い出す。
視覚が無くなると、聴覚が敏感になる。
彼の声は低くて少しハスキー。
輪郭のはっきりしない言葉が少しずつ紡がれ、声の間隔が空き、やがて彼の寝息だけが静かな部屋に響き始めた。
偶に寝返りを打つような音も。
僕は目を閉じ、何も考えないように、眠ることだけに集中しようとしたが、自分の心臓の音が頭に響いて眠れそうになかった。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!