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着替えとメイクを終え、ビルの屋上でみんなと合流すると、僕の周りに人が集まる。
僕の顔をじっと見つめるヒョン達。
思えば、しっかりと映像映えするアイドルメイクをして貰ったのは初めて。
風に吹かれる髪を整えに来たヘアメイクさんに手鏡を貸してもらい、自分の顔を確認したが、ちゃんと男性アイドルの顔になっていた。
メイクってすごい。
さっきまで寝起きでぼやけた顔をしていたヒョン達も、バチバチのメイクをしていると、とんでもないオーラがある。
間もなくして撮影が始まった。
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カメラの位置を変えたり、照明の角度を変えたり、何回も何回も踊る。
何の妨げもない屋上に降り注ぐ太陽光は容赦なく僕らの肌を焼いていく。
休憩の度に日焼け止めを塗り直した。
スタッフさんが持ってきてくれた日傘の影に収まるようにしゃがみこんで、撮影が再開されるのを待つ。
顔を上げると、スングァンが手招きして僕を呼んでいる。
はい!と返事をして立ち上がった時、目の前が揺れる。
思わずもう一度その場に座った。
たたた、とこちらに近付き、僕の身体を支えるように肩を抱いた。
もう大丈夫、ひらりと手を挙げてゆっくりと自分の力で立ち上がる。
スタッフの声が聞こえ、全員がまた位置に着く。
はい!と揃った僕らの返事が響く。
撮影は照明との連携が大切。
照明の調節に1番時間をかける。
暫く光の加減を探っていた。
待機していると立ち位置の近いドギョムが声を掛けてくる。
イントロの位置は上手寄りの後ろ。
ドギョムとスングァンに挟まれる形で立っている。
僕は心配かけまいと口角を上げる。
音出ます、と声が聞こえ口を噤み曲の世界に入り込む。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。