放課後。
先輩が俺の名前を大きな声で呼んだ。
廊下にいる先輩が教室にいる俺に向かって。
クラスメイトの視線が怖い。
ただの先輩後輩ですよ。
俺はそう思いながら、席を立った。
帰り道...
俺がそう言うと先輩は、首をかしげて、
と言った。
ていうか、俺、何で先輩と一緒に
帰ってるんだろう...
先輩はそう言ってから、にっこり笑って、
と言った。
.......駄目だ。この先輩。
先輩はそう言って、俺の腕を引っ張った。
何なんだ..一体...。
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あの後、先輩に腕を引っ張られて...
結局、遊園地に来てしまったわけだ。
家に行きたいです。
先輩はそう言って指差したのは...
いや、ちょっと待て。
俺、ジェットコースター乗れな...
....。
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今更ですか。先輩。
可愛いって...
先輩はそう言って、何かを思い出したふりをした。
俺がそう聞くと先輩は、「うーん、」と
少し考えてから、
と言った。
多分...?雑すぎません?先輩。
まぁでも、観覧車は嫌いじゃない。
俺がそう言うと先輩は、微笑んで、
と言った。
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俺と先輩は、観覧車に乗った。
いや、だって、遊園地ですから。
いや、だって、夕方に来ましたもん。ここ。
何だ...?この沈黙....
びっくりした...
何でそんなこと聞くんだよ...
励まさないでくれ...
お願いだから...!
気付いたら、そう、怒鳴っていた。
先輩は肩を「ビクッ」と震わせて、
と言った。
先輩に謝って欲しかった訳じゃないのに...
俺がそう言うと先輩は、悲しそうに笑って、
と言った。
そして、席を立って、俺の隣に座った。
「ゆらっ」と観覧車のゴンドラが揺れる。
先輩はそう言って、ゆっくり息を吸ってから、
と言った。
先輩はそう言って、少し笑うと、
ゆっくり話し始めた。
他人に触れられて...他人に呼ばれて...
俺は、先輩の幼馴染みが先輩を助けた理由が
助けた時にあの言葉をかけた理由が
この瞬間、分かった気がした。
それと同時に、思った。
この先輩は死んではいけない。
この先輩は死なせてはいけない。
そう、思った。
俺がそう言うと先輩は、少し驚いてから、
悲しそうに笑って、
と言った。
俺はそう言って静かに笑った。
え?
綺麗...?
先輩はそう言って、微笑んだ。
は?え?
先輩がそう言ったので、俺は、観覧車の外を見た。
そこには、綺麗な夜景が広がっていた。
先輩は、本当に感動しているように、そう言った。
先輩は、笑った。
その時の夜景は、人生の中で一番、きらきら
していて、綺麗だった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。