『あなたは、誰?』
...え?
先輩は起き上がって、そう言った。
俺がそう言うと先輩は、悲しそうに笑って、
と言った。
どうして先輩の記憶が...
「君にとっての宝は何かナ?」
「時間?お金?それとも...」
「大切な人の記憶?」
サシビの言葉。
あぁ。そうか。そういうことだったんだ。
サシビは宝を隠した。
“記憶”という名の宝物を。
じゃあ、どこに隠したんだ...?
先輩の“記憶”はどこに...
「人は独りでいれば傷付かない。」
「人は他人がいないと生きているか分からない。」
先輩の言葉が頭をよぎる。
そうだ。あそこに行けば...
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放課後...
誰も、あの放送を信じていない。
授業も普通にあった。
町がいつも通り動いている。
もしこのまま、夜が明けたら...
怖い。怖いけど...
ここで諦めるわけにはいかない。
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ここは遊園地の大観覧車の中。
ここなら、先輩の記憶がよみがえるかもしれない。
そう、思ったから、ここへ来た。
先輩はそう言って笑う。
ちょうど、一番上にきた。
今は夜。
あの時と、同じ時間。
先輩。
どうか、どうか...
思い出してくれ...
ギュッ
突然、先輩が俺に抱き付いてきた。
...?
先輩?もしかして...
先輩はそう言って、笑った。
思い出してくれた。
俺は、“記憶”という名の宝物を、見つけたんだ。
ゲーム、クリアしたんだ。
良かった...
俺は笑いながら、そう言った。
先輩も、笑いながら、そう言った。
どうだ。宝、見つけたぞ。サシビ。
ははっ。
俺の勝ちだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。