第9話

カクレンボ Ⅲ
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2018/12/22 14:11
もう、終わりだ。





















花江 結
え...
突然、咲田が私の前髪をそっと上げて
優しく額にキスをした。
花江 結
さ、咲田?
不破 咲田
元気でな。
咲田はそう言って、悲しそうに笑う。

そして、私の腕を強く握った。
花江 結
え?どうし.....

















ドン!




















咲田はそのまま、掃除用具箱から離れた所に
私を突き飛ばした。





















どうして?



















私はそう思った。





















だから、咲田の方を見た。
























見なければ、良かったのかもしれない。





















咲田の肩が、鬼に食べられていた。





















花江 結
咲..田...?
咲田は、無理して笑っていた。





















どうしよう。


















咲田を、助けないと...

















でも、誰が...?




















今まで、咲田に助けられてばかりだった私に、


















何ができる?


















私は...



















何もできない。






















でも、このまま逃げていいの?




















咲田が死ぬかもしれないのに?




















そんなの、絶対に嫌だ。


















でも、何でだろう。




















脚が、震えて動かない。


















どうして?どうして、震えてるの?動かないの?

















早く、助けに行かないと...




















不破 咲田
何してる!早く逃げろ!
花江 結
で、でも...!
不破 咲田
行け!
咲田は、強い眼差しで、そう言った。
不破 咲田
いいから!
咲田はそう言って、大きく息を吸うと、
不破 咲田
俺を無駄死にさせる気か!
大きな声ではっきりと、そう言った。























私は走った。


















咲田に背を向けて。




















振り返らないように、一生懸命、



















走った。




















咲田の言葉と、その眼差しに動かされた。




















全力で、走った。





















咲田の思いを大切に抱えて。





















本当は、振り返って、咲田の所に走って行きたい。





















でも、咲田の思いを踏みにじってはいけない。


















走れ。走れ。どこまでも。






















私に咲田の記憶が有る限り、走り続けろ。




















咲田の思いに答えるんだ。






















泣いて、叫んで、走れ。


















その足が有る限り、ずっと、ずっと、ずっと。


















泣いて、叫んで、走るんだ。

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