気付いたら、暗闇にいた。
また、あの夢だ。
『助けて。』
女の子がまた、うずくまっている。
『先輩...』
きっと、この女の子は3年前の先輩だろう。
『助けて。』
『皆、死んじゃった。』
『もう、やだよ...』
『...!』
女の子が顔を上げて、驚いたようにこちらを見る。
俺は、女の子の頭を優しく撫でていた。
『あなたは、誰...?』
『俺は、片岡楓。』
『君の後輩、かな...?』
『後..輩...?』
『うん。』
俺はそう言って微笑む。
『絶対に、助けるから。』
『助けて、くれるの...?』
『うん。』
『本当?嘘じゃない?』
『うん。嘘じゃない。』
俺がそう言うと、女の子は泣いた。
泣いて、「怖い」と何度も言った。
俺は、何度も女の子の頭を撫でた。
『絶対に助けるから。』
『絶対に...』
自分の部屋のカーテンから、光が差し込む。
夢か...
学校の昼休み...
先輩はそう言いながら、弁当を食べる。
先輩はそう言って、笑う。
先輩はそう言って、卵焼きを箸で掴み
俺の口の前に出す。
そう。俺が作った。けど...
あ、駄目だ。この先輩。
いや、俺、子供じゃない.....って⁉
無理矢理かよ...
俺は、何回か卵焼きを噛んでから飲み込んだ。
先輩はそう言って、卵焼きを「ぱくっ」と食べる。
突然だった。
目の前に、ぬいぐるみが現れた。
子供が持つような、可愛いやつじゃない。
なんか、こう、もっと怖い...
口だけのぬいぐるみ。
喋った...?
選ばれ..た...?
『リゲーム』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。