第3話

オニゴッコ Ⅰ
1,582
2022/06/05 05:28
花江 結
いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!



















叫ぶことしかできなかった。

自分の目から溢れ出す涙が
自分の家族の血と混ざり合う。

















あの夢をもっと早く思い出していれば...

あの夢を家族に教えていれば...

あの夢を見ていたなら、阻止できたはずなのに...

















どうして?どうしてこんなことになったの?

あのぬいぐるみは何?何がしたいの?

誰か、誰か、誰か....

















教えて。



















不破 咲田
結!!



















突然、目の前に幼なじみが現れた。

昔からよく見る女っぽい顔つきの
私の幼なじみ。

家族みたいに過ごしてきた私の幼なじみ。




















花江 結
咲田...
不破 咲田
結?
花江 結
死んじゃった...
不破 咲田
え?
花江 結
皆、皆、死んじゃった...!
不破 咲田
結、落ち着い...
花江 結
もう、やだよ...やだよ...!
不破 咲田
結!
咲田は私の名前を呼んだ。
そして、私より少し大きい腕で私を抱きしめた。
不破 咲田
落ち着いて。
花江 結
でも...
不破 咲田
落ち着くんだ。
不破 咲田
大丈夫。大丈夫だから...。
花江 結
咲田...?
咲田は泣いていた。
私に一度も涙を見せたことのない咲田が
泣いていた。
いつもヘラヘラ笑っていた咲田が泣いていた。
花江 結
どうしたの...?
不破 咲田
良かった...。
花江 結
え?
不破 咲田
無事で、良かった...。
花江 結
咲田?何言って...
不破 咲田
家に帰ったら、皆死んでた。
花江 結
え...?
不破 咲田
父さんも母さんも妹も姉ちゃんも。
不破 咲田
皆、死んでた。
花江 結
...
不破 咲田
だから、結も死んじゃうんじゃ
ないかって...すごく怖かった。
花江 結
咲田...。
不破 咲田
良かった...本当に良かった...。
咲田が泣いてる。

私はどうすればいい?

泣く?

叫ぶ?



















いや。それは違う。


















だから私は、微笑んだ。

だから私は、微笑みながらこう言った。



















花江 結
うん。生きてる。
私は、生きてるよ...。



















─────────────────────────────────



















ウシビ
ウシビ
さぁさぁ、皆さん。夕日が
近くなって来ました。
ウシビ
ウシビ
そろそろゲームは終盤ですよ?
町の人
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
町の人
いゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!

















人の叫びも少なくなってきた。




不破 咲田
結!行くよ!
花江 結
あ、うん!
私たちは、この町から出ることにした。

隣町に逃げれば、このゲームから逃れられるんじゃ
ないかと考えたからだ。






















花江 結
もうすぐ着く...!

















ドン!



















突然、前方を走っていた咲田にぶつかった。

咲田が急に止まったからだ。
花江 結
咲田...?
不破 咲田
嘘..だろ...?
花江 結
咲田?どうし...え?
目の前は灰色だった。

灰色の大きな壁。

まるで、
「隣町には行かせない」
と言っているようにそびえ建っていた。




















花江 結
もう、逃げられない...





















ウシビは人間を見ながら笑う。


ウシビ
ウシビ
さぁ、楽しいゲームの始まりだ。

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