叫ぶことしかできなかった。
自分の目から溢れ出す涙が
自分の家族の血と混ざり合う。
あの夢をもっと早く思い出していれば...
あの夢を家族に教えていれば...
あの夢を見ていたなら、阻止できたはずなのに...
どうして?どうしてこんなことになったの?
あのぬいぐるみは何?何がしたいの?
誰か、誰か、誰か....
教えて。
突然、目の前に幼なじみが現れた。
昔からよく見る女っぽい顔つきの
私の幼なじみ。
家族みたいに過ごしてきた私の幼なじみ。
咲田は私の名前を呼んだ。
そして、私より少し大きい腕で私を抱きしめた。
咲田は泣いていた。
私に一度も涙を見せたことのない咲田が
泣いていた。
いつもヘラヘラ笑っていた咲田が泣いていた。
咲田が泣いてる。
私はどうすればいい?
泣く?
叫ぶ?
いや。それは違う。
だから私は、微笑んだ。
だから私は、微笑みながらこう言った。
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人の叫びも少なくなってきた。
私たちは、この町から出ることにした。
隣町に逃げれば、このゲームから逃れられるんじゃ
ないかと考えたからだ。
ドン!
突然、前方を走っていた咲田にぶつかった。
咲田が急に止まったからだ。
目の前は灰色だった。
灰色の大きな壁。
まるで、
「隣町には行かせない」
と言っているようにそびえ建っていた。
ウシビは人間を見ながら笑う。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。