第28話

生きる意味を探す少年 〜5〜
439
2020/02/24 12:31
復讐が終わり、しばらくしたある日。
よくするように生きる意味を考えていた。
如月 リクト
……。
思いつかない…?
まぁ、いつも思いつかない。
だけど、心に引っかかる”何か”が生きる意味
となっていた。
自分では分からないが、今はその俺の生きる
意味となる”何か”が消えた。
それだけは理解することができる。
何が消えた?
いつも何があった?
心に引っかかっていたのは?
どうして今は引っかからない?
………………あ。
必死に考え、俺は答えに辿り着いた。
……トウカがいない。
生きる意味を考えている時、トウカはいた。
いつもいて、話しかけてくれた。
俺と話す時、トウカは笑っていた。
あの笑顔が生きる意味になっていたんだ。
きっと、俺が生きる意味は…
”大切な人の笑顔を見ること”
…だったのかな。
けど、もうトウカはいない。
俺の前に現れることは一生ない。
なら、生きる意味は?
答えは………ない。
これで分かった気がした。
トウカが死んでから毎日がつまらなかった。
まるで、トウカと出会う前のような。
…いや、出会う前よりつまらなかったかな。
如月 リクト
…終わりにしよう。
静かに呟き、立ち上がる。
向かったのは、綺麗な夕日が見える崖。
トウカが行きたいと騒ぎまくったから、仕方
なく電車で付き添って一緒に見に行った。
その時の夕日は綺麗だった。
今も綺麗。だけど、何か物足りなかった。
ごめんな、トウカ。大好きだった。
だけど、気付けなくて伝えれなかった。
もし、もう一度願いが叶うなら…
……俺は誰かの復讐を叶えてやりたい。
俺みたいに死ぬ結果になるかもしれない。
けど…それでも。叶えたい復讐っていうのは
あると思う。
復讐はこの世に遺す傷。
自分が死んでも、復讐をしたということは、
この世に遺る。
…ただ、それだけ。
如月 リクト
…まぁ、面白かったかな。
そして、俺は崖から飛び降りる。
神に見捨てられた天使、ありがとう。
トウカ、ありがとう。
海に着水するまでに見る走馬灯。
笑うトウカの顔が浮かぶ。
まだ笑うのかよ。
口元に浮かぶ笑み。
海にぶつかる寸前、崖の上から俺を見ている
トウカがいたような気がした……
















…………ここは何処だ?
体が軽い。
周りを見ると、人が歩いている。
だけど、歩く人は俺が見えていない。
ふと上を向くと、何かが浮いている。
幽霊なら飛べると思って、ジャンプ。
案の定、俺の体は浮き、一瞬で浮いてる何かがいる高さまで飛べた。
俺に気が付いたのか何かは話しかけてきた。
天使
何で死神がいるの?
あの時の神に見捨てられた天使だった。
天使の瞳に俺の姿が映る。
顔にはモヤがかかり、黒い全身マントを身に付けていた。確かに死神だ。
何で?そんなの知るか。


ただ、トウカは消えるのは俺にとって…
死神
…神に見捨てられたからだ。
天使
同じ?
死神
そう、同じ。お前は何?
天使
私は私だよ。
あぁ、そうだったな…。なら…
死神
お前は何をしている?
天使
人間観察。
死神
へぇ…
人間観察、か…。
俺はきっと人間が嫌いだ。
まぁ、死神なら復讐を手伝うことが出来る。
なら、付き合ってやるか。
死神
その人間観察。俺も手伝って
やるよ。
天使
ほんと!?
死神
ああ。
ノエル
私はノエル。君は?
死神
俺は…
トウカが描いたあのキャラを思い出す。
だから、口にしたのは ───
ザク
─── ”ザク”だ。
ノエル
じゃあ、ザク!よろしくね!
ザク
こちらこそ。
まずはこのハッキリ言って、アホな天使に、
人間の言葉を教えないとな。
あの迷子の少女がトウカから聞いた言葉。
『願いってのは強く願えば、いつかはきっと叶うもんだから…例え、辛くても頑張れよ』
この言葉の意味がやっと分かった。
俺は強く願って本当に願いが叶ったから。
そうして、死神へと転生し神に見捨てられた
俺はノエルの人間観察に加わった……。

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