第13話

とても貧乏な少年 〜1〜
592
2018/10/05 10:51
村雨 ショウ
腹が減った…
ポツリと呟き、外を見た昼休み。
俺、村雨むらさめショウは席でスマホを触っていた。
今日の昼飯は抜きか…。
それを感じたのは朝のことだった。
俺の家はハッキリ言って、貧乏だ。
家はボロいし、飯も少ししかないし、生活は
カツカツ…
全ては父さんのせい。
父さんがギャンブルに金をつぎ込んで見事に
失敗して、貧乏になった。そして、母さんと
俺を捨てて、家を出て行った。


母さんも母さんだ。
母さんはいろんな男を家に連れてきて、いか
がわしいことをして金を稼いでいる。正直、
マジでやめてほしい。人としてそれが正しい
ことかどうか分かれよ。
俺の家が貧乏だということは大体の人が知る
ことだった。
だから、たまに友達が奢ってくれたりして
くれて…嬉しいけど、心は痛い。
俺はアルバイトで少しずつ金を貯めていた。
母さんに見つかると、使われるからちゃんと
隠している。
貯まった金で、何か1つ大きい買い物をする
のが俺の夢だった。
そろそろ使ってもいい頃かな…。
そんなことを思うと、昼飯抜きなんて頭から
消える。何回もあったことだし。















村雨 ショウ
ただいま…。
ボロい家に帰ると、玄関に知らない靴。
村雨 ショウ
……。
またかよ…。
村雨 ショウ
はぁ…
靴を脱ぎ、部屋を進むと男女の楽しそうな声
が奥の部屋から聞こえてきた。
母さん
あら!ショウ。おかえり〜!
男とベッドで転がり、笑顔で俺に手を振って
いる母さん。
母さん
今日、掃除をしていたらショウ
の部屋から沢山お金を見つけた
のよ〜!これで暫くはここから
追い出されないわ〜!
村雨 ショウ
は……?
つまり?俺が貯め続けたアルバイト代で家賃の滞納を全部支払ったってことか…?
母さん
助かった!ショウ、大好きよ!
村雨 ショウ
……。
母さんを無視して、自分の部屋へ。
隠していた場所を見たけど、一円も残って
いなかった。
村雨 ショウ
マジでやりやがった…。
廊下に出ると、母さんの嬉しそうに男と話す
声が聞こえる。
俺は無言で家を出る。


行先なんてない。
ただ……ただ、家にはいたくなかった。
「ショウ、大好きよ」とかよく言うよ。
今までにその言葉を何回聞いたことか。


別に家賃を払うなら払う。
せめて、一言声をかけて欲しかった。
きっと、生まれるところを間違えたんだ。
別に貧乏でもいい。
…ただ笑って楽しい家族だったら良かった。
村雨 ショウ
ははっ…俺は生まれた時から神
に見捨てられたってことか。
俺は少し涙を流し、笑って呟く。
歩いて近くのコンビニへ。


俺の全財産を使い、コンビニで今日の晩飯と
明日の授業で必要なハサミを買った。
コンビニの帰り。


暗い道、街灯の光が道の脇から顔を出して
いた”黒い彼岸花”を照らしていた……

プリ小説オーディオドラマ