第18話

努力が報われない少女 〜1〜
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2018/10/10 09:44
戸田先生
もっと頑張りなさい。
柏谷 ユイ
はい…。
バドミントン部の練習中のこと。


私、柏谷かしわやユイは戸田とだ先生に他の部員全員の前
で怒られていた。
戸田先生
柏谷さんは今日は居残り。練習
が終わったら私のところに来な
さい。
女子
またユイ居残りだって〜…
女子
何回怒られてるんだろうね〜…
他の部員達がクスクスと笑う。
戸田先生
大野君をもっと見習いなさい。
彼はいつも頑張って練習して、
さらには周りの子にまで教えて
あげているのよ?なのに、柏谷
さんは努力はしないわ、大会に
出ても初戦敗退ばかりだし…
いつもと同じことを言う戸田先生。
私の通う学校のバドミントン部は、強豪校と
して有名だった。私も入部したけど、圧倒的
な差でスグに置いてけぼり。
先生は努力してない。とか言っているけど、
実際は違う。
体力をつけるために毎朝走るし、ラケットの
素振りだって家に帰ってから何百回とする。
なのに…
男子
おい、レン。どう思う?
大野 レン
…柏谷、すげぇだっせー。
後ろから聞こえる男子達の声。
大野おおのレンはこのバドミントン部の中で一番、
大会で活躍し、全国大会までいった。
だから、先生は大野を贔屓ひいきしている。
部活をサボっても何も言わない。


人の物を勝手に借りて捨てても、隠しても、
先生達は何も言わなかった。
私なんか風邪で休んだとき、戸田先生に自己管理が出来ていないって言われた。
言われたのが悔しくて必死に頑張った。
だけど、私の努力は報われない。
戸田先生
柏谷さん、聞いてるの!?
柏谷 ユイ
聞いてますよ…
戸田先生の怒鳴り声が脳内に響く。
こうやって、立って怒られるだけなら、まだ
マシな方だった。
部活が終わって、私は言われた通りに残る。
みんながいなくなると、戸田先生がやって
きて…
戸田先生
私が直接指導してあげる。5回
ラリーが続いたら帰って。
戸田先生が命令口調で私に言う。
柏谷 ユイ
はい…。
戸田先生
じゃあ、始めます。
柏谷 ユイ
っ!!
戸田先生が打ったシャトルは「バチン!!」
と音を立てて、私の脛に当たった。
私は痛みにしゃがみ脛を押さえる。
戸田先生
あら?座ってていいのかしら?
私は柏谷さんが落とす度に次を
どんどん打っていきますよ。
そう言って、次のシャトルを打つ。
シャトルは頭にヒット。
そう。私は先生にいじめられていた。
戸田先生
ほらほら!どんな場所に打って
きても打ち返さないと!
痛がる私を楽しむように笑い、シャトルを私
目掛けて戸田先生は打ち続ける。
私は痛みに耐えながら1時間をかけ、ようやく
5回のラリーを続けると、やっと帰ることが
許された。
家に帰るとお母さんが…
お母さん
おかえり。今日も遅くまで練習
お疲れ。
にこやかに微笑み、私を出迎えてくれた。
お母さんには戸田先生にいじめられている事
を教えていない。
心配だけはかけたくなかったから……。
お母さん
今日も部活は楽しかった?
柏谷 ユイ
…うん!けど、頑張ったからさ
少し疲れちゃった!
お母さん
あらあら。じゃあ、今日は早め
に寝なさい。
柏谷 ユイ
そうする!
私は笑ってお母さんに返事をした。
明日も部活。
せめて、足を引っ張らないようにしないと…
少し不安になっても明日は来る。
授業があって、いつも通りの放課後練習。
邪魔にならないように体育館の端の方で基礎
となる素振りをしていると、大野が先生に…
大野 レン
先生。
戸田先生
どうしたの?休憩?
私には休憩なんか言ってもくれないのに、
大野にはするかどうかまで聞く。
大野 レン
いや、違うんすけど…
戸田先生
じゃあ、何?
大野 レン
下手なら俺が柏谷に稽古つけて
やりますよ。
戸田先生
え?
部活トップがいきなり下手な私に教えると
言ったことに驚いている戸田先生。
私は戸田先生以上に驚いていた。
戸田先生
お、大野君。柏谷さんに教える
なら、もっと強くなるために、
練習をした方が…
戸田先生が必死にやめさせようとする。
大野 レン
別にいいんすよ。
素振りの腕が止まっていた私はこっちを見た
大野と完全に目が合う。
大野 レン
教えた方が俺自身も改めて確認
が出来るんで…
床に落ちていたシャトルを1つ取ると、大野は
私のところに来て…
柏谷 ユイ
……。
大野 レン
てわけで、俺が教えてやる。
と、言って私にシャトルを渡してきた。
そのときにした嫌な予感が後で当たることに
なるのを、まだ私は知らなかった……

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