バドミントン部の練習中のこと。
私、柏谷ユイは戸田先生に他の部員全員の前
で怒られていた。
他の部員達がクスクスと笑う。
いつもと同じことを言う戸田先生。
私の通う学校のバドミントン部は、強豪校と
して有名だった。私も入部したけど、圧倒的
な差でスグに置いてけぼり。
先生は努力してない。とか言っているけど、
実際は違う。
体力をつけるために毎朝走るし、ラケットの
素振りだって家に帰ってから何百回とする。
なのに…
後ろから聞こえる男子達の声。
大野レンはこのバドミントン部の中で一番、
大会で活躍し、全国大会までいった。
だから、先生は大野を贔屓している。
部活をサボっても何も言わない。
人の物を勝手に借りて捨てても、隠しても、
先生達は何も言わなかった。
私なんか風邪で休んだとき、戸田先生に自己管理が出来ていないって言われた。
言われたのが悔しくて必死に頑張った。
だけど、私の努力は報われない。
戸田先生の怒鳴り声が脳内に響く。
こうやって、立って怒られるだけなら、まだ
マシな方だった。
部活が終わって、私は言われた通りに残る。
みんながいなくなると、戸田先生がやって
きて…
戸田先生が命令口調で私に言う。
戸田先生が打ったシャトルは「バチン!!」
と音を立てて、私の脛に当たった。
私は痛みにしゃがみ脛を押さえる。
そう言って、次のシャトルを打つ。
シャトルは頭にヒット。
そう。私は先生にいじめられていた。
痛がる私を楽しむように笑い、シャトルを私
目掛けて戸田先生は打ち続ける。
私は痛みに耐えながら1時間をかけ、ようやく
5回のラリーを続けると、やっと帰ることが
許された。
家に帰るとお母さんが…
にこやかに微笑み、私を出迎えてくれた。
お母さんには戸田先生にいじめられている事
を教えていない。
心配だけはかけたくなかったから……。
私は笑ってお母さんに返事をした。
明日も部活。
せめて、足を引っ張らないようにしないと…
少し不安になっても明日は来る。
授業があって、いつも通りの放課後練習。
邪魔にならないように体育館の端の方で基礎
となる素振りをしていると、大野が先生に…
私には休憩なんか言ってもくれないのに、
大野にはするかどうかまで聞く。
部活トップがいきなり下手な私に教えると
言ったことに驚いている戸田先生。
私は戸田先生以上に驚いていた。
戸田先生が必死にやめさせようとする。
素振りの腕が止まっていた私はこっちを見た
大野と完全に目が合う。
床に落ちていたシャトルを1つ取ると、大野は
私のところに来て…
と、言って私にシャトルを渡してきた。
そのときにした嫌な予感が後で当たることに
なるのを、まだ私は知らなかった……
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。